2019年11月25日発売の週刊ヤングマガジン2019年52号で、『首を斬らねば分かるまい』5話が掲載されました。
『首を斬らねば分かるまい』5話は、自分の初めての女になった遊女・朝霧に対する楼主の悪行を知った幸乃助が、楼主と直接対決を始めたところから始まります。
作中で初めてと言っても良い、怒り心頭の幸乃助の戦いの行方はいかに……? というお話です。
本記事では、『首を斬らねば分かるまい』5話『この国の支配者』のあらすじと感想を紹介していきます。
※ここから先はネタバレ注意です。
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首を斬らねば分かるまい5話のあらすじネタバレ
明かな怒りを見せる幸乃助に対し、あくまでも客として扱い花魁を用意しようとする楼主の亀五郎。
対する幸乃助は勿論、花魁ではなくお前に話があると言います。
しかし、この吉原の楼主も怯む事は無く酒を薦めますが、幸乃助は唐突に銃を突きつけ、亀五郎を座らせます。
大人しく従いながらも、まだ若い幸乃助に対して亀五郎の態度は変わらず強気なままです。
朝霧の件を問い質す幸乃助に、朝霧がどうやって高価な品を売り、身請け出来たのか、そして朝霧への熱意を察する亀五郎。
朝霧の父親に金を渡して犯させたのかと尋ねるも、小遣いを渡して良い女に育ったと言っただけと言う亀五郎は、銃を突き付けられようとも座ってはいません。
そして、事の全てを忘れろと言う亀五郎。
自分を殺せば廓は無くなるか? 家の為に身体を売る女はいなくなるのか?
そう問われ幸乃助は言葉を返せません。
朝霧を死にぞこない呼ばわりし、他の女で楽しめと強気な亀五郎ですが、兄・達臣が現れます。
弟が迷惑かけたと言う達臣に、人の店に口を出すなと忠告してくださいなと味方を付けた気の亀五郎。
その言葉を裏切るように、『俺』の店に口を出すなと達臣はニヤリと笑いながら煙草に火を点けます。
御冗談をと笑う亀五郎に、ここは自分の土地だと主張する達臣。
負けじと亀五郎は、自分の名前の書かれた『沽券状(土地の所有者・所有権を表すもの)』を見せて、何百両積まれようと売らないとまだ笑っています。
その自慢の『沽券状』を寝言と一蹴した達臣が見せたものは『地券(明治四年に発行された、地租改正で土地に税を貸す為に整備を進めている、新しい土地の所有証券)』でした。
役人に話を付け、この区画の地券だけ自分の名前で発行させた達臣。
この国の支配者に銃は要らないと、権力者の戦い方を幸乃助に見せつけました。
三日後には、既に華族が土地ごと買い取った為に葉桜の楼主が変わったという噂が吉原に流れています。
幸乃助の元に現れた朝霧は、葉桜楼の遊女が解放された事も知っていました。
死に損なったのも何かの縁と、吉原を離れる決意をした朝霧。
その元に、あの父親が駆け寄って来ます。
金の為にあんなことをしたのだと頭を下げる父は、故郷へ一緒に帰ろうと言いますが、その父に朝霧は平手打ちし、くたばっちまえと言ってのけます。
お世話になりましたと幸乃助に改まってお礼を言う、朝霧に何も出来なかったと悔しそうな幸乃助。
遊女としてではなく、朝霧は口づけをします。
真っ赤な美しい実でありながら中身は空っぽの鬼灯の身を、自分達遊女に例え、そんな実にも小さな種はあると朝霧。
人を想い、人に惚れる種があると言い、朝霧は振り返る事無く吉原を去りました。
朝霧のように、貧困の為に娘たちが苦界に沈むというのは昭和三十一年の『売春防止法』まで続いた、この国の史実の一つなのです。
首を斬らねば分かるまい5話の感想と考察
今週も感情の起伏が忙しい一話でした。
いきなり銃を突きつける事で、その怒りの具合が伝わります。
撃つ気は無かったのかもしれませんが、事によってはどうなっていたかわかりませんね。
個人的にはもう亀五郎を撃って欲しかったですが、亀五郎の言う通りなのが事実です。
楼主一人いなくなっても遊女の全てが救われるわけではない。
貧困がある限り、この街に女が買われてくる事に変わりは無い。
それを金で買う男がいる限り。
それが、達臣が見せようとした闇なのです。
言い返せない弟の元に颯爽と現れたのはその達臣。
もう、一話二話の性欲のままに……とでもいうようなふざけた兄さん像を全て払拭するくらいカッコいいですね。
権力者の喧嘩は銃などといった暴力ではないんです。
金です。
幸乃助も万年筆一本で朝霧を身請けさせるのではなく、そうしていれば良かったのかもしれませんが、そこは亀五郎を失脚させる為の達臣と、ただ朝霧を救いたい幸乃助の目的の違いでしょうか。
元気になった朝霧はやっぱり綺麗です。
そして駆け寄って来た父親の、故郷へ帰ろうと言っている時の顔は完全に再犯を宣言しています。
沙夜に首斬らせるべきです。
最後に、朝霧は幸乃助に惚れたと見られる言動を残して去りましたが、沙夜の件が無ければもっと違う展開があったのではないでしょうか。
とはいえ、沙夜がいなければ幸乃助が吉原に来ることも無ければ出逢う事も無い。
別れは必然だったのでしょうね。
朝霧編(勝手に命名)はそんな切ない終わりを迎えました。
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