2020年1月20日発売の週刊少年ジャンプ2020年8号で、アクタージュ97話が掲載されました。
96話では、白石演じる三蔵法師の登場により、夜凪の意識が少し戻ってきた様子です。
鏡のように相手の表情を真似ることで、失いかけたコントロールを再び取り戻すことができたのです。
しかしこの後は羅刹女が諦観にも似たような感情の元で全てを許すシーンです。
果たして夜凪は最後まで羅刹女を演じることができるのでしょうか?
本記事ではアクタージュ97話「届け」のあらすじと感想を紹介していきます。
※ここから先はネタバレ注意です。
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アクタージュ97話のあらすじネタバレ
客席から少し離れた席において、星アリサと天知心一は変わらずにその舞台を見守っていました。
この時星は、しっかりと夜凪の芝居が崩れたことを認めていたのです。
そして夜凪から黒山を外したことを悔い、さらには山野上花子の所業について考えを巡らせるようになります。
明日以降もこの芝居を続けるのかと訝しがる星の隣で、天知は投票のための映像は初日のものが使われると言い出すのです。
何事かと天知を見る星に対して、彼は初日さえよければいいという素人の考えと説き、それを怖がる素振りも見せずに恐ろしいと言います。
そして当然、それを㎉黒山自身も気付いていたのです。
本来であれば役者の手綱を握らなければならない演出家が、その役目を放棄し、さらにそれぞれの限界突破を無理矢理に引き起こさせるという舞台演出にもまた、黒山はどこか歯がゆい思いで夜凪を見守っているのでした。
ここからどう許すという演技をするのか、ということについて黒山は密かに敵チームでありながらも夜凪にエールを送るのでした。
舞台上でもそれは同じです。
花子と夜凪により、無理やりにでもその限界を突破させられた市子と武光は最善を尽くすために何ができるかを考えています。
また白石と王賀美は各々、自分に課された役目の上で、市子と武光を使いながら、どう夜凪を芝居に戻すかを考えています。
そして孫悟空である王賀美は、戦うことを辞めようと、その空気を一変させようとします。
生きているうちが華、羅刹女とのケンカは楽しく永遠とやっていたいが、殺しも殺されもしたくない、そう王賀美は観客に聞かせるように言います。
同時に、火焔山の炎を消してほしい、とも言います。
しかしその言葉は夜凪に届かず、彼女の目は舞台袖にいる花子をじっと見つめているのでした。
その瞬間後ろにいた猪八戒、武光の衣装がその視界に入り込み、堂々と声をあげて見得を切ります。
それはかつて一幕で王賀美がやったことであり、確実に、存在感で夜凪の視界と意識を奪うものでした。
孫悟空としては猪八戒を止めるものの、王賀美は武光の機転に勝機を見出し、彼を認めるのです。
市子もまた夜凪の意識が向いたことを自覚しつつ、どうするべきかとしっかり考えを張り巡らせます。
全員が夜凪に対してその気持ちを届けようと頭を働かせ、声を掛け、体を動かしているのです。
そして、夜凪は、不意に自分の視線が花子から観客や王賀美、そして共演者たちに向くのを自覚します。
そして、一言、分かったわ、とセリフを零すのです。
共演者はやったか、と思うものの、瞬時にその違和感に気付きます。
舞台袖で見ていた花子も当然気付き、楽屋で待つチーム乙のメンバーですら気付くのでした。
それは、夜凪の集中力が解けた瞬間でした。
芝居を放棄し、羅刹女との溝を作り、自分を守りながらただ舞台の進行を続けようとしたのです。
その様子に、「あの頃の私になろうとしている」というセリフと共に市子の脳裏に浮かんだのはただ流されるだけになりかける幼い自分の姿でした。
それを見ていた千世子はふざけんな、と声を荒げます。
これはいわば夜凪と千世子の直接対決の場でもあったのです。
それを完璧じゃない状態で終えようとするその姿に、当然千世子の怒りはマックスに到達します。
芝居をあきらめた夜凪は、とにかく期待されるように動こうと決断したのです。
心を隠して許すと言えばいい、そう思いながら彼女は芭蕉戦を振り上げました。
このままチーム甲の舞台は終わってしまうのか、その結果は次回以降に持ち越されることになりました。
アクタージュ97話の感想と考察
花子の暴走により、夜凪は過去の怒りを思い出し、それを抱えながらも芝居を続けていました。
さらに共演者である白石、王賀美、市子、武光は各々の限界を無理矢理突破させられ、夜凪のフォローに回るのでした。
傍から見ればしっちゃかめっちゃかの舞台であるチーム甲の羅刹女もそろそろ終演を迎えます。
最後に「万事休す」というワードが見えることからもう一回くらい何かがひっくり返る可能性があります。
今回、王賀美と武光の機転により、どうにか夜凪を戻すことには成功したものの、その状況が改善したわけではありません。
しかしこれは五人で作る舞台です。
まだ白石と市子が何か機転を働かせるかもしれないという希望が残っています。
特に市子の方には同じ女性として、同じ女優としての共感に近い感情が今回でも描かれています。
夜凪にとっては、千世子という絶対的ライバルのほかに、こうして舞台で出会った女優としての理解者、という対比の構図を作るという意味でも必要な存在であります。
特に今回は近しい関係として選ばれている武光は異性であり、理解者とすると恋愛関係の展開に持ち込んでしまう恐れもあるため、必要なのは同性の理解者でした。
だからこそ、次回には白石の手を借りてでも、市子によって何かしら、夜凪に語り掛けがあると考えてよいでしょう。
そしてなんとか、感情を開放しながら羅刹女の舞台を終える、というのが最高のエンディングなのではないでしょうか。
もはや夜凪にとってはチーム乙のことは見えていないでしょうし、この舞台における勝利は間違いなく無難に演じるチーム乙になるのは目に見えています。
それでもこの舞台で、夜凪の抱えた闇が晴れることを私は期待したいです。
次回以降、夜凪がもう一度心から笑ってくれることを願っています。
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