2020年6月8日発売の週刊ヤングマガジン2020年28号で、『首を斬らねば分かるまい』30話が掲載されました。
『首を斬らねば分かるまい』30話は、それぞれの道を歩き出した幸乃助と沙夜。
『死』を知る事を決意した幸之助が向かう場所とは……。
本記事では、『首を斬らねば分かるまい』30話『東京最後の夜』のあらすじと感想を紹介していきます。
※ここから先はネタバレ注意です。
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首を斬らねば分かるまい30話のあらすじネタバレ
『死』を知らず、想い続けた沙夜との別れを迎えてしまった幸乃助に、『人を殺さなくては生きられない場所』を達臣は提案します。
そんな場所があるとは思えず、幸乃助は戸惑いを隠しきれません。
昨年五月、政府が民に出した告諭を出したものを達臣は読み上げました。
抜粋すると、それは『国民は血税を持って国に服せよ』というもののようで、『血税』を幸乃助は理解出来ません。
国の言う血税とは『徴兵』の事で、達臣が言う人を殺さなくては生きられない場所とは戦争の事でした。
血税を、生き血を抜かれる事だと勘違いした農民が一揆を起こしたり、兵役逃れの本が大流行していたりと巷は大騒ぎになっているようです。
華族の立場どころか自分の命そのものも捨てる事になるかもしれませんが、『死』を知るのはうってつけの場所だと達臣は言います。
言葉を失う幸乃助ですが、沙夜もまた生きる為に人を殺し続けて来た人生です。
沙夜に近付く答えが見つかるとしたら……、修羅の道を進むか想い人を忘れ去るかと問われた幸乃助は、悩む事も無く達臣に礼を言います。
弟を死地に送り出して礼を言われるという、皮肉な状況を達臣は一笑しました。
その頃、沙夜は自宅で様斬りの最中でした。
地面から生えたような頭部や積み重ねられた胴体を、晴美を斬れずに涙を流す幸乃助を思い出しながら次々に叩き切って行きます。
息荒く斬るその様に、荒れていると見た父は声を掛けますが、何でもないと事の真相は話しません。
明治となった今の時代に、首斬り家に縛られず自分の道を歩く事を許可する父ですが、沙夜はそれを受け入れようとはしません。
自分が八代目当主として何人斬ったか覚えているかを沙夜は尋ねますが、父は百人以上としか答えられませんでした。
沙夜はこれまでに斬った百八十一人、一人一人の最後の無念の叫びまでも覚えていると言い、刀を捨てる事は彼らを捨てる事と言います。
この命ある限り、無念に散り行くその魂を背負うと『あの日』決めたと、沙夜は改めて首斬り家業を続ける事を宣言します。
そんな沙夜に、遠方から『私刑』の依頼が来ていると父は言います。
断ろうと思っていたようですが、血が喚ぶならどこへでも行こうという当主は実にいい顔をしています。
それから一週間が経ちました。
とある店で随分と険しい表情の達臣が、煙草を吸いながら何かを待っていました。
襖を開けた遊女が運んできたのは遊女も寿司も極上物の女体盛りでした。
幸乃助の送別会の為のものでしたが、当の本人の姿が見えません。
一人、屋根の上に寝そべり月を見ながら沙夜を想いふけっています。
やって来た達臣に何をしているのか聞かれると、東京最後の夜に景色を見ておきたくてと落ち着いた様子です。
生まれた場所と行きたい場所は違うと切り出す達臣。
人は皆あがきながらそれを探し、見つけられる者も叶わぬ者もいるといつになく真面目な兄の姿です。
そんな東京最後の最後の夜を迎えるのは沙夜もまた同じでした。
明治六年、二人は東京を発ちました。

首を斬らねば分かるまい30話の感想と考察
前回最後に達臣が言った『人を殺さなければ生きられない場所』は、やはりというか当然戦争でした。
合法的に人を殺す場所というか、殺さなければ自分が死ぬことになるのですから『死』を知るには良い場所です。
陸軍入りするようですが、横浜でも大立ち回りをしてみせた幸乃助の強さはどれほど通用するのか次号からの新章突入に期待です。
そして、沙夜は斬った者たちの魂を背負うと言っていましたが、一度は刀を捨てて良い顔していたのに何を言っているのかという感じでした。
刀の無い人生を一日とはいえ充分に満喫していたように見えましたし、その後の人生に不安はありましたが不満は無さそうでした。
沙夜が背負うと決めた『あの日』は恐らく、友人以上の感情もあった太七を斬った日なのでしょうが、幸乃助が晴美を斬れなかった日に改めて刀を握る人生を選び、斬った人たちを背負うと決めたのでなければ納得出来ません。
様斬りの最中に幸乃助を思い出していたのは、斬りたい気持ちもあったのではないかと思いますが、そんな男を選びひと時でも刀を捨ててしまった自分に対する怒りもあるのかもしれません。
世論や政府が『斬首』を廃止しょうとする流れから、心が揺れていたのかもしれません。
遠方の『私刑』がどんな展開を待っているのかわかりませんが、戦場に向かう幸乃助と交わる事は当面無さそうです。
今回知って驚いたのが、召使的な男だと思っていた人は父で、『当主』と『娘』を切り離して話していた事でした。
読み込みが浅かったと反省どころでした。
神妙な顔の達臣が何を待っていたのかと思えば、女体盛だった事にはそんなオチが……と思う反面、らしさがあって良かったです。
また当分出番は無くなりそうですが、生まれた場所と生きたい場所は違うという言葉にグッと来たので、やはり良い兄貴キャラしています。
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