2019年12月23日発売の週刊少年ジャンプ2020年4・5合併号で、アクタージュ95話が掲載されました。
94話では、演出家である山野上花子の過去が明らかになりました。
絵を描いていても誰にも理解されない苦しみと孤独感を感じていた学生自体。
そしてそれを利用しようとする大人たちの汚い感情に汚された誇り。
それらすべてへの怒りがこの羅刹女という作品へと注ぎ込まれていたのでした。
そして彼女はその先の風景を、演者と通してみたいと言い出したのです。
そしていよいよ羅刹女の物語は最終局面へと向かいます。
本記事ではアクタージュ95話「アイデンティティ」のあらすじと感想を紹介していきます。
※ここから先はネタバレ注意です。
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アクタージュ95話のあらすじネタバレ
舞台では大立ち回りを繰り広げる役者たちが、戦いを楽しんでいるような光景が広がっていました。
まるで燃え上がる火焔山の様だと阿良也は表現します。
多勢に無勢といった様子でも楽しそうに戦う羅刹女に理解を示すように、孫悟空、猪八戒、沙悟浄は戦いのテンポを合わせます。
「好きに暴れるのは楽しい」という孫悟空王賀美に「虚無を知らないだけ」と羅刹女夜凪は返します。
「虚無など知らない」という猪八戒武光には、その体を抑え込むことで意味を教えます。
そして、一瞬の油断から、羅刹女は沙悟浄市子を捉え、「この怒りを失えば私には何が残るのかと」そう問いかけます。
その瞳は全く持って、舞台袖に居る花子の瞳そのものでした。
沙悟浄を捉えながら、彼女は薪があるから炎は絶やさず燃やし続けられる、と言います。
そう言った夜凪の背後に少女時代の夜凪が再び現れるのです。
その時、舞台上の、すべての時間が止まるのでした。
少女は「皆貴方のお芝居を楽しんでいる」と言います。
舞台袖に立つ花子を指して「あいつはずっと高みの見物、あいつの脚本をかなえてあげることが役者の仕事なの?」と問いかけます。
そのどちらにも肯定を示す夜凪に、少女は再び続けます。
「どんな苦しい想いをしているかも知らずに、それを強要するのが仕事なのか」と。
いつのまにか、夜凪はただの高校生に戻っていました。
母の気持ちを無視して、花子に刺激された怒りを鎮めたりしてよいものかとその少女は恨みのこもった口調で詰ります。
そして再び舞台上の時間が動き出し、そこには孫悟空はじめとした三人が倒れ伏す姿がありました。
観客が見守る中、倒れ伏す孫悟空たちを一瞥して芭蕉扇を振り上げるその姿はまるで怒りの矛先を失った抜け殻のようにすら見えました。
しかし、堰を切ったように三蔵法師の存在に思い至った彼女は水を得た魚のようにその表情を明るくさせます。
それに対して、サイド乙を率いる黒川は「いるよなぁ、ああいうやつ」とぼやきます。
口を開けば不平不満、誰かのせいにしている人間は大勢いると彼は言います。
学校ではいじめの対象が切り替わり、繁華街ではケンカが起こり、ネットでは他人への悪意で埋め尽くされている、と言うのです。
そうやって怒りを保つことで自意識を保ち、それが自己同一性、つまり、アイデンティティになってしまっている。
そういう存在はいまやどこにでもいる、そう黒川は分析し、羅刹女の存在の普遍性を説きます。
それは花子にも言えることであり、その怒りを忘れることで、自分ではなくなるという恐れをはらんでいるとも黒川は言います。
だからこそ、黒川には分かったのです。
今の夜凪の状態がいかに極限状態で、それを彼女自身がコントロールして演技をしているかを、彼だからこそ分かる視点でした。
いよいよ最終シーンへと、白石が動き出します。
花子に対して、白石は一つ、役者とは演出家の想像を超える仕事をする、といい、覚悟しておいてください、と零します。
いよいよ、最終局面となり、羅刹女を演じる夜凪の心にも過去の映像が去来します。
三蔵法師によって羅刹女の怒りはほどけるのか、唇を噛みしめながらも夜凪は「許す」ことを選び白石に対峙するのでした。
アクタージュ95話の感想と考察
全体を読み始めて、ようやく気付いたことが一つあります。
おそらくサイド甲のこの展開自体が、羅刹女になぞらえたものなのではないかと思います。
花子という羅刹女が孫悟空たり得る夜凪に怒りを煽り、さらに仲間たちを鼓舞させる。
視聴者に、花子の過去を見せることで同情を誘い、それでもやったことへの悪さを訂正することはなく、結末へもっていくという展開です。
このあと、サイド甲の締めも、サイド甲が演じた羅刹女の締めも、おそらく同じような展開になるのではないでしょうか。
例えば、羅刹女が三蔵法師、そしてその仲間たちによって心をほどかれ、彼らと自分自身を許す、という展開であれば、夜凪が武光や王賀美達の支えによって、花子を許す、ないしはとがめることをしない、という展開なのではないでしょうか。
次回以降がとても楽しみですね。
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