2020年4月6日発売の週刊ヤングマガジン2020年19号で、『アルキメデスの大戦』第212 話が掲載されました。
『アルキメデスの大戦』第212話は、櫂が味方であるはずの海軍から猛反発を受けてしまいます。
牟田口のミスリードによって南洋諸島の統治権移譲が海軍に知られ、海軍大臣の吉田は猛反発。
陸軍同様に海軍もまた自分達の管轄である領土の話になると感情が先に立ち、論理的になれません。
櫂は米国からの見返りの話を論理的に説明しますが、これにも海軍の嶋田が激高し話し合いになりません。
怒鳴り散らす嶋田に対し、櫂は…
本記事では、『アルキメデスの大戦』第212話[北か南か]のあらすじと感想を紹介していきます
※ここから先はネタバレ注意です。
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アルキメデスの大戦212話のあらすじネタバレ
櫂としては南洋諸島の統治権以移譲の件は、満鉄株の売却益で日露戦争で生じた外国債を返済し、国の財政再建を果たすことを説明した後、切り出す予定でした。
それを見事に牟田口がぶち壊し、海軍大臣・吉田の猛反発を買ってしまいます。
吉田は南洋諸島を手放すことなど国民が認めないと絶叫。
近衛がせめて櫂から説明を聞きましょうと間に入りますが、聞くまでもないと怒鳴る始末。
東条はこの時、櫂は海軍を敵にしてしまい焦っているに違いないと内心ほくそ笑んでいました。
ですが海軍の反発も陸軍の反発も想定内のことであり、味方など誰もいないことを最初からわかっていた櫂は動じません。
陸軍大臣・畑が陸軍も中国撤退を呑んだのだから海軍も身を切るべきだと発言。
さして内容も考えず、陸軍の面子だけで発言した畑に対して海軍側の人間が全員猛反発。
再び場は陸軍vs海軍の様相を呈します。
そんな荒れる状態を静めたのはなんと牟田口でした。
牟田口はこの移譲に対して米国に見返りを求め、承諾を得たのですと自信満々に報告。
もちろん実際に交渉したのは櫂でしたが、牟田口は私が見返りを勝ち取ったのですと言わんばかりのドヤ顔。
協議会のメンバーはそんな牟田口から、米国領土である北太平洋アリューシャン列島が日本に譲渡されると聞かされます。
ザワつく会場。
この場にいたほとんどの人間がアリューシャン列島が具体的にドコなのかわかりません。
それも想定内だった櫂は、事前に大きめの地球儀を用意するように田中に頼んであり、地球儀を会場の真ん中に置かせます。
櫂は地球儀を使ってアリューシャン列島の場所、そして巻尺まで持ち出してその軍事的意味を分かりやすく訴えます。
南洋諸島から米国ニューヨークまでの距離はおよそ1万2900キロ。
アリューシャン列島からニューヨークまでは北極圏上空を経由すれば6800キロ。
万が一、米国本土に攻撃をする場合、どちらが有利か答えは明白だと語り、地政学的にはハワイ諸島を占領する以上の価値があると。
そして現在日本が保有する九七式飛行艇の最大航続距離が6770キロあることを踏まえ、アリューシャン列島が戦略的意味において重要になることを解説。
近衛はなぜ米国はそんな要衝と南洋諸島との交換を認めたのかが納得いかないのだがと櫂に訊ねます。
櫂は米国だけでなく、世界は北極圏の真の価値に気がついていないと話し、平面地図ばかり見て地球が丸いことをすっかり忘れてしまっているのだと答えました。
その時、突然海軍の嶋田が怒鳴ります。
アリューシャンなど知った事か、トラック諸島を失う事は泊地機能を失う事だと海軍のくせにお前にはわからんのかと櫂に対して激高。
南洋諸島があるからこそ防衛戦略は成り立っている、地の利なくして勝利は得られないのだと、そんなこともわからんのかとばかりに言い放つのでした。
櫂は冷静さを欠いている嶋田にそもそも論を展開します。
嶋田の言った防衛戦略は米国に対してのこと。
ならばなぜ米国が敵なのかと問いかけます…

アルキメデスの大戦212話の感想と考察
櫂のいる時代は、それまでの艦船の保有数なり泊地で制海権を考えていた時代が終わりを告げようとしていた転換期でした。
航空領域が制海権に関係し始め、その比重も比例して大きくなっていった時です。
つまり、航続距離やミサイルなども含めた航空戦力が制海権の柱となっていく時代の始まり。
櫂はそれを地球儀を使って説明していましたが、冷静さを欠いていたからか、頭が固いのか嶋田や吉田は理解していませんでした。
櫂が伝えようとしていたのは、2Dで地図を見るのではなく、3Dで見ることの重要性。
まだ空軍という概念もなかった時代ですから無理もないのかもしれませんけれど、航空機の優位性を理解していた人間がいかに少なかったのかを痛感させられる場面でした。
ラストで櫂が投げかけた質問に即答できる方はスゴイと思います。
これは米国からの一方的な敵意を感じるからではないかと考えます。
日露戦争後に起こったあの黄禍論が根強く残っている欧米、特に米国は、人種差別法である排日移民法を成立させた国です。
排日移民法がたとえ実質的にたいした数の話でなかったとしても、精神的に両国に与えた影響は計り知れなかったと容易に今でも想像出来ますから。
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