2020年2月27日発売の週刊ヤングジャンプ2020年13号で、『少年のアビス』1話が掲載されました。
『少年のアビス』今週号から始まった峰浪りょう先生による新連載作品です。
1話はまだ物語の全貌は見えません。
地方の男子高校生である主人公・黒瀬令児は家庭の事情により町を出る事も叶わず、将来も幼馴染にパシリのような扱いをされながらこの町で生きるしかないと思い生きています。
しかし、憧れのアイドルグループのメンバーと会ってしまった事により人生が大きく変わっていく……かもしれないという雰囲気が描かれています。
本記事では、『少年のアビス』1話『その町の少年』のあらすじと感想を紹介していきます。
※ここから先はネタバレ注意です。
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少年のアビス1話のあらすじネタバレ
学校の休憩時間、スマホでアイドルグループの映像を観ている主人公の黒瀬令児はクラスメイトに呼ばれて進路指導室に向かいます。
担任の『柴ちゃん先生』と進路についての話で、令児はK私大を狙えるような成績でありながら就職を希望しています。
その理由は、引きこもりの兄・認知症の祖母・看護師の母と四人暮らしの為、町から出られないとの理由です。
就職をして、母をもっと楽をさせたいと言う令児に、先生はこの町で就職をして楽をさせるのは難しいと思うと言い切り、もっと先を考えて相談してみる事を勧めます。
その帰り、バスに乗った令児はスマホで『acrylic(アクリル)』の映像を観ていると、隣に幼馴染のチャコが乗って来ました。
令児にアクリルを布教成功したチャコは東京に行ってアクリルのライヴに行きたがるほどのファンのようです。
メンバーの『青江ナギ』を女神と言い、前世で徳を積んだであろう青江ナギと、現在進行形で不幸な自分を比べ、今死んだら来世は東京の美少女に生まれ変わると言い出す始末。
そんなにそんなチャコは早稲田を受験させて貰える事になり、東京に行けると大喜びです。
そんな県1の私立の女子高にも通うチャコを、令児は自慢の幼馴染と嬉しそうです。
逆に、進路を聞かれ就職希望と答える令児。
家の事情を知りつつも、チャコは令くんの人生は令くんのものとアドバイスします。
そんな二人に、声を掛ける通行人がいました。
似非森浩作という作家の『春の棺』の聖地巡礼の場所である情死ヶ淵の道を尋ねた女性二人組に、チャコは教えてあげました。
『春の棺』の中に、この町に流れる神月川の上手の方に伝わる情死……心中の民話が描かれているそうです。
江戸時代初期の頃、山にあった集落にやって来た旅人の女は村の男たちがみんな恋に落ちる程の美人でした。
その中の一人と相思相愛になりますが、他の村人の嫉妬による恋路の妨害に二人は川に身を投げて心中します。
その二人の遺体が見つかった所が『情死ヶ淵』とチャコは小説の内容を教えてくれました。
今の何も無いままより、心中の町としてでも有名になった方が良いというチャコは嬉しそうです。
その時、令児のスマホにファミレスへ呼び出しのメッセージが届きました。
呼び出したのは峰岸玄という、縁を切りたくても切れないような、令児とチャコの二人にとって過去に何かあったような雰囲気の相手です。
コンビニで峰岸の為に煙草を買う令児。
店に向かうとガラの悪い二人の男と派手目な女と峰岸はいました。
峰岸に言われ追加の煙草を買いにコンビニに戻ると、先ほどと店員が替わっていて制服の為に買えませんでした。
峰岸に電話で伝えると、次は3箱買って来いと言われます。
虐められていたチャコとそれを守る令児を守ってくれた、小学校時代の峰岸を思い出し、ずっとその借りを返し続けて行かなくてはいけないのかと、礼児はため息交じりに思います。
家に帰ると、認知症の祖母の介護をする母、引きこもりの兄はからあげを持って来いと暴れ、疲れているはずの母は令児に令くんがいなかったら死んでると笑顔で言い、本当に町を出るどころではありません。
コンビニに行くと、さっきの煙草を売ってくれなかった女性店員が外へゴミを捨てに行く所でした。
その後ろには怪しげな男の影。
危険を察知して令児が追い掛けると、廃棄の弁当をホームレスの男にあげていただけでした。
そのまま、煙草に火を点ける女性店員。
一服しないとやってらんない事ばっかだよねという令児に気付いた店員の言葉に誘われるように、令児も煙草を貰い、火を点けて貰います。
長い前髪で隠れていた女性店員の顔が風に煽られ露わになると、令児は咥えていた煙草を落としてしまいます。
その店員は東京でアイドルグループをやっているはずの『青江ナギ』でした。
拾った煙草を口に入れられ、ナギの既に火の点いた煙草でまるで煙草越しのキスのように火を点けられると、令児の中で何かが変わり、ここから死(いのち)が始めると確信しました。

少年のアビス1話の感想と考察
新連載という事で軽く流し読みをしていましたが、自分も地方出身で色々な理由もあって東京に憧れ地元を離れた人間なので、地方独特の焦燥感というか閉塞感みたいなものはわかりました。
地元の人間と連絡を取らないので実際にどんな生活かはわかりませんが、地元でそのまま就職し、学生時代の友人なんかとたまに町でばったり会って歳を取った事を実感して……なんていうことを今は想像しか出来ませんが、昔は耐えられませんでしたね。
今はネットの普及によって地方にいながら『何者か』になる事も出来ますが、やっぱり人間関係は大事なのでどのみち地元を離れていたでしょう。
この作品のように心中スポットしか話題にならないような場所ではなかったですが、やっぱり地方から見た東京は別世界だったし、住んでみても地元に帰りたいと思った事は無いです。
本作の主人公・令児は人間関係に難ありのようですが、家から出る事は出来ない絶望的な状況も描かれています。
チャコが説明してくれた民話のなかで、相思相愛になった男女は村から出してもらう事も出来ず……とあったので、町から出られもしない、この先、生きて行くのも辛そうな令児の選択肢には死がチラついていると思います。
何故かこんな地方のコンビニで働いている憧れの女の子と知り合ってしまったものだから、『心中』もこの先のキーワードになって来るでしょう。
何より、煙草越しのキスみたいなやつは『ブラックラグーン』でもありましたが、ツボでした。
そこまで読んでもう一度最初から読み返しました。
非常に楽しみな作品です。
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