『アンサングシンデレラ 病院薬剤師 葵みどり』は、月刊コミックゼノンにて連載されている荒井ママレ先生による人気漫画です。
14話は、抗がん剤治療を決意した74歳芝崎太一と、それを支える息子、そして摂食障害で入院中でもある孫の樹里それぞれの病気への向き合い方が描かれています。
初めてがん患者を目の当たりにしたみどりは、『死』が迫る患者の姿に何を見るのか。
本記事では、『アンサングシンデレラ 病院薬剤師 葵みどり』14話『それぞれの闘い』のあらすじと感想を紹介していきます。
※ここから先はネタバレ注意です。
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アンサングシンデレラ14話のあらすじネタバレ
太一の抗がん剤治療の1クール目が終わって間もなく、摂食障害で入院していた孫の樹里の退院が決まりました。
がんである事を隠していた事による罪悪感から摂食障害になっていた樹里は、病気を告知し家族で話し合ってからはどんどん症状が良くなっていたそうです。
がん領域の認定薬剤師である江林も、太一の治療に関わっている為樹里の適応力には感心するほどでした。
抗がん剤の調製は安全キャビネット内で行い、実際に調製する人(江林)と監査役(みどり)で作業を行っています。
抗がん剤はがん細胞に働きかけて進行を遅らせたり死滅させたりしますが、同時に健康な細胞にも影響を与えてしまうので取り扱う医療者にも注意が必要なものです。
病院の設備等によっては妊娠の可能性がある女性薬剤師は作業制限が掛けられる場合もあるそうです。
太一の化学療法スケジュールは1クールの中で3日間の入院期間があり、近年では長期入院することなくQOL(生活の質)を維持する事を重視し治療が行われています。
入院中は体調の変化に合わせて細かく薬剤量を調整できるのが強みという事もあり、みどりには細かい変化のチェックと聞き取りを命じられます。
医療用麻酔がいかに安全なのという説明が大事と言われ、緩和ケアという言葉を口にするみどり。
『緩和ケア』『医療用麻酔』とどうしても終末のイメージが先行されがちですが、痛みを取り除く『治療』の一つに過ぎないとイメージと実情の差を江林は語ります。
それでも、『積極的な治療をやめる』『見放された』と思う患者や家族も多いそうで、緩和のみになると関心が薄れる医師がいる事もまた事実だそうです。
『どう死んでいくか』と『残りの日々をどう生きるか』は同じことだと江林は言います。
がんは患者数が多いので新薬の開発も盛んで薬剤の種類も治療方法も選択肢がどんどん増えていますが、施設も人手も足りないというのが現状との事です。
体調が良い時は自分の店にも立つ太一は、お客さんとも自虐的なボケを交えつつ明るく接しています。
入院生活が始まると、樹里がお見舞いに来て一緒に夕飯を食べたり自分の体調の良さを見せてみどり達を安心させます。
しかし、太一が退院後に具合が悪そうに寝込むと樹里もまた食欲を失ってしまいますが、みどりが薬の説明をしてあげたお陰で副作用の症状を理解し、以前のような摂食障害になることなく持ちこたえる事が出来ました。
そして、抗がん剤治療の3クール目が無事に終わり4クール目に入った頃には季節は春になっていました。
入院期間に入り、病室に行くとそこにはすっかり痩せた太一の姿があり、みどりは戸惑いの表情を隠し切れませんでした。
2週間ほど食べられていないという太一。
江林と担当医師の畑中による今後の治療方針による意見のぶつかり合いが始まってしまいます。
数値も悪くなく杖を使いながらもしっかり歩行できるのでPS(パフォーマンスステータス……身の回りの事が出来る状態)1~2の現状、中断して増悪するリスクを不安視する畑中。
一方で無理させるリスクを主張する江林。
元々治療に積極的ではなかった太一に、抗がん剤治療をやった事を後悔させたくないという思いがあります。
しかし、やると決意して頑張っている今の太一に並走してあげるべきではと畑中は反論します。
お互いに患者の力になりたいという思いから、緊迫した空気にみどりは冷や汗ものでしたが、腹水の検査次第で本人と相談という所に落ち着きました。
病室に戻る途中、みどりは太一を見た時の動揺を指摘され、患者は敏感に感じるからと江林に注意されます。
もしかしたら副作用を我慢していたのかもしれず、患者の気持ちに近付くためにはどうすれば良いのかと江林は思い悩んでいるようです。
患者の『死』も理解した上で寄り添っていただろうかと、みどりも初めてのがん患者の姿に悩みます。
検査の結果、今回は化学療法の継続は問題無いとされ、予定通り3日で退院しました。
それから一週間後、誤嚥性肺炎による発熱で緊急搬送された太一。
抗がん剤は中止を余儀なくされてしまいます。

アンサングシンデレラ14話の感想と考察
次回15話へ更に続きます。
抗がん剤治療が中止という事はその間に悪化する事もあるという事で……。
話の終わりと共に患者の『命』の終わりも見えてきてしまっています。
このシリーズでは医療漫画というよりも『命』そのものについて考えさせられるような場面があります。
江林の『どう死んでいくか』と『残りの日々をどう生きるか』は同じという言葉。
この作品のこの場面は『がん患者』に対しての言葉ですが、健康に生きている誰もが『寿命』を持っている以上、死は必ず訪れます。
つまり、『残りの日々』を誰もが消費していく中でどう生きなければいけないか考える必要があります。
皮肉な事に、がんなど大病ではない健康な人ほどその選択肢があるのに馬鹿な事をして無駄に消費するだけの人生を送ってしまう人もいます。
人はもっと『命』に関して考えるべきではないかと思います。
今回の話の中で江林が太一の店に伺いたいという場面があります。
自分はお酒はあんまりだけどみどりは行けますからと勝手に薦めるのですが、そこくらいしか明るいシーンもなく、話がシリアスに展開しています。
タイトルの『それぞれの闘い』というのは家族3人の事かと思いましたが医師やみどり薬剤科の人間も含めたものだったんだなと、読み終えた時に気付きました。
次回最後になるのでしょうか……。
見守りたいと思います。
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