2019年12月19日発売の週刊ヤングジャンプ2020年3号で、『キングダム』626話が掲載されました。
防戦一方だった信(しん)が龐煖(ほうけん)と互角の戦いを繰り広げつつあった。
それは龐煖が個としての武の究極に到達しているならば、信はこれまで関わる人間たちの思いを紡ぎ、力と成す絆の力を体現しているものだから。
李牧本陣に戦線崩壊の危機が迫る中、避難をしない李牧(りぼく)。
絶対に落とされぬ自信の拠り所は龐煖の武。
朱海平原の戦いの趨勢を決める戦いはいよいよ佳境に突入し、信が背負う力が今、龐煖を追い詰める。
本記事では、『キングダム』626話『残酷な現実』のあらすじと感想を紹介していきます。
※ここから先はネタバレ注意です。
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キングダム626話のあらすじネタバレ
龐煖が膝を屈する様に秦趙両陣営から驚愕の言葉が放たれます。
茫然と何かを呟いている信。
それは、親友であり、共に天下の大将軍を目指した漂、酒の匂いを漂わせた麃公(ひょうこう)将軍、畑の匂いが香る尾到、大きな花の香り広げる王騎(おうき)将軍達への思いを紡いだものでした。
皆が信に力を貸してくれていること、それをきちんと理解していることを皆に告げる信。
そして、その力が龐煖には存在せず、それ故に龐煖の刃は痛みを与えるのみで、重くないのだと宣言します。
龐煖が塞で矛を交えた時から何も変わっていないと断ずる信。
信は龐煖に対して、声高に「お前の刃は重くない」と断じて、攻撃に移りますが……
龐煖の返す刃にその場に座り込んでしまう信。
信に対して、龐煖は「かつての仲間達の力、人の連なりこそがそもそもの誤りであり、人と人を縛り付ける黒き鎖なのだ」と返します。
そして、それを打ち砕くものは己が刃と続け、我こそが武神であると宣言するのです。
その龐煖の言葉に異を唱えたのは李牧でした。
李牧は龐煖が「真の武神であるならば、17年前に王騎を両断し、合従軍の際に麃公に腕を折られることもなく、秦左翼の老兵ごときに足を貫かれることなど在り得ない」と断じます。
「武の極みに立ちながらも矛盾した存在であることに気付かない龐煖を麃公は阿呆と評したこと受け、その矛盾こそが龐煖に対して突きつけられた答え」なのだと論じます。
人を人の上の存在に引き上げるべき超越者であろうとし、その力を天に示さんとする龐煖が人の力を体現する者達に勝てぬ理由とは……
──誰がどう足掻こうとも、人は人以上の存在にはなり得ず、所詮は人でしかないと言う天からの残酷な答え──
を示していたからなのでした。
李牧の導き出した答えに愕然とする幕僚達。
その中で、カイネは李牧に「それでは、龐煖は信に敗れるのか?」と質問を投げかけます。
その質問に否と告げる李牧。
激しく撃ち合う信と龐煖でしたが、龐煖の一撃がまた信に決まります。
その場に力無く座りこみ、耳朶と目の双方から血を流す信。
それでも信は力無き瞳でも直ぐに立ち上がり、龐煖へと強烈な反撃を見舞います。
轟音と共に体制を崩す龐煖へと畳み掛けるようにと檄を飛ばす飛信隊の隊員達。
しかし、信は追撃をすることなく、力無く倒れ込み、力無く立ち上がるのでした。
尾平(びへい)に抱かれた羌瘣(きょうかい)が意識を取り戻し、尾平は羌瘣の意識が戻ったことを喜び、彼女に信の奮闘ぶりが見えるかと問います。
羌瘣が見た幽鬼の如き信の姿に彼女は怖気を覚え、力無く信の名を口にするのでした。
一方、河了貂(かりょうてん)も「やはり信の元に行かなくては」と那貴(なき)に伝えます。
急に信の元に向かうと告げる河了貂に「万一にも信と河了貂の両名が討たれたら飛信隊が機能を失うからと自身が言ったのだろう」と訝しげに語る那貴。
河了貂は先程から変な感じがすると理由を述べ、那貴に謝罪しつつも付いてくるようにと指示を出してから馬を進めるのです。
李牧は「龐煖が武の極みに達していることに間違いはなく、その龐煖に命懸けで否を突きつけているのが王騎であり、麃公であり、そして信である」と語ります。
しかし、「それは正に命懸けであり、先に述べた王騎も麃公も龐煖に否と突きつける前に力尽き、龐煖の刃の前に命を落としているのだ」と締めるのでした。

キングダム626話の感想と考察
漂、麃公大将軍、尾到、王騎、信が関わって来た全ての者達が信に力を貸している。
そのことで、信は力を増し、龐煖に迫るまでに来ました。
しかし、李牧の言う通りそれは命懸けの所業で、信の身体は龐煖の刃によって数え切れない程の傷を負っています。
痛みはあるが重くはない龐煖の刃ではあっても、着実に信の身体を蝕んでいっているのは疑いようもないことでしょう。
反撃しては立ち上がり、反撃しては立ち上がる。
意識を取り戻し、その様を見た羌瘣がゾッとしたのも当然であると言えます。
今回の625話は英雄譚、ヒロイック・サーガと言うには少し寂寥感を覚える展開でした。
龐煖に突きつけられた天からの答えもサブタイトルにあるように残酷な現実だと言えます。
人の思いを紡ぎ、その力を束ねて挑んできた者達に真の意味では勝てなかった、勝ち切ることが出来なかった龐煖。
龐煖は所詮人であり、超越者足り得ないことを突きつける“否”と言う答えを出す前に力尽き、龐煖の凶刃に斃れていった王騎大将軍と麃公大将軍。
個人の武を極めし龐煖も、人の思いを紡いでその力を束ねし者達の誰もが真の勝利者ではなかったと言う残酷な現実。
その現実の前で信が真なる答えを導き出し、真の勝利者となることのみを願うばかりです。
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