2022年7月11日発売の週刊ヤングマガジン 2022年32号で、『1日外出録ハンチョウ』110話が掲載されました。
『1日外出録ハンチョウ』110話は、新登場となる一風変わった男・佐藤の目的を邪魔するため、大槻と沼川はその外出に付き合うことになりました。
佐藤の目的、そして大槻は最後に勝つことは出来るのでしょうか。
本記事では、『1日外出録ハンチョウ』110話『靴道』のあらすじと感想を紹介していきます。
※ここから先はネタバレ注意です。
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ハンチョウ110話のあらすじネタバレ
この日、大槻と沼川の2人で解放されると、もう1人佐藤という男が目を覚ましていました。
自力でペリカを貯めて外出してきた男の姿に、2人は声も掛けにくそうにしています。
佐藤は服好きが高じて帝愛に借金を作り地下に落ちたファッション系債務者です。
大槻を見つけると外出日が被ったことに嬉しそうに話しかけますが、大槻の方は戸惑うばかりです。
沼川はマジで買うのかと改めて尋ねました。
佐藤は一切躊躇する素振りも無く、オールベンの革靴を買うと断言しました。
オールベンについて語り始めようとする佐藤でしたが、既に何度も聞いており、沼川も高級革靴ということは知っていました。
15万円もの革靴を買うために、佐藤はせっせとお金を貯めてきました。
地下での物販やギャンブルといった誘惑がありながらも地下では履くことが出来ない高級革靴を買うために外出券代を含めて200万ペリカも自力で貯めてきたのです。
地上へのペリカ流出を防ぎたい大槻は、ビールやチンチロなどあらゆる誘いをかけて止めようとはしていましたが、佐藤は言いました。
オールベンを所有している人生と、オールベンを所有していない人生を想像してみて欲しいと言われたところで大槻には何も理解出来ませんでした。
大槻が地下で革靴を履くことは出来ないと話したところで、止められもせずとうとうこの日を迎えたのです。
予定まで時間もあるため、オールベン購入に付き合うことになりました。
どこで心変わりがあるかわからないため、隙あらば茶々いれて止めようと企む大槻ですが、本屋に寄ってファッション誌を読んだり別な店で別な革靴を見始めたりとなかなかオールベンには行きません。
心はオールベンで浮気はしないと言う佐藤は、寄り道の理由を他のも見てやはりオールベンが1番だということを確かめていると言いました。
そんな奇行に付き合わされて、1時間後にようやくオールベンに向かいました。
試着して大槻が茶々を入れる間もなく購入を決意し、その様子を見ていた沼川は止められないことを残念がっていましたが、地上に出ている時点で大槻も止められないことは予測できていました。
ところが、会計に時になるとお金を渡す手を佐藤は離そうとはしませんでした。
佐藤にとってこの金は筆舌に尽くしがたい労働と様々な誘惑に耐え続けて数年掛けてなんとか貯めた金であり、涙も流れてきました。
これなら止められると沼川は慌てますが、大槻はあえて止めようとはしませんでした。
今後地下での数年間、念願のオールベンを所有している人生とオールベンを所有していない人生を想像してみろと大槻は言いました。
外出券を使ってここまで来て、その努力が報われなくてどうするという大槻の言葉が後押しとなり、購入することになりました。
その後、佐藤と別れた2人は一仕事終えたようにお茶をしていました。
沼川はどうして後押ししたのかを尋ねると、佐藤が躊躇した理由を大槻は問いました。
ギリギリで金が惜しくなったと沼川はいいますが、惜しくなったのは金よりも夢だと大槻は言いました。
それでも、もうその夢が手に入るのに躊躇する理由が沼川にはわかりませんでした。
佐藤が追い求めていたのは靴そのものではなく、買うまでの過程にあったと大槻は言いました。
佐藤にとってオールベンを買う事はRPGのラスボスを倒すようなものであり、辛くても充実感があったと大槻は言いました。
だからといって背中を押す理由が、やはり沼川にはわかりません。
金が惜しくなったなら地下に金を落とすことが出来るかもしれないものの、夢が惜しいのであれば、夢が果たされない限り大槻たちの声も届くことはありません。
生きがいを失い燃え尽きた人間こそ堕とすのは容易いと、大槻は悪魔のような笑みを見せて言いました。
後日、早速佐藤を堕としにかかる大槻でしたが、オールベンに行く前に寄ったウエスティンというブランドの靴に惹かれた佐藤は、新たな夢を持ち始め、既に大槻の声は届きませんでした。

ハンチョウ110話の感想と考察
新キャラのファッション系債務者・佐藤の登場でした。
大槻の誘惑にも一切乗らずに自分の信念を貫くという彼は、今後大槻と絡むことは無さそうです。
もう誘惑しても無駄だとわかっている以上、大槻も手を出すことは無いはずです。
終盤で大槻は、欲しいものを買う過程に辛くても充実感があると言っていましたが、自分が欲しいものを買った後にある虚無感のようなものの正体がようやくわかった気がしました。
佐藤のように15万円もの高級革靴を買ったことはありませんが、欲しくて買ったはずなのに何故か虚しさがこみ上げるあの現象は、自分の中で燃え尽きたということだったのでしょう。
そんな人間こそ堕としやすいようですが、佐藤同様に欲しいものは次から次へと出てくるものです。
他のギャンブルによる債務者等と違うのは、佐藤は金の使い道がファッション1つであり、他に興味が無かったからかもしれません。
大槻からすれば非常に厄介な相手であり、なかなか地下でも珍しいタイプの人でしょう。
しかし、やはり払えないほど借金してまで服を買うのはよくありませんと、個人的体験談としてお伝えしておきます。
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