2022年7月4日発売の週刊ヤングマガジン2022年31号で、『アルキメデスの大戦』第320話が掲載されました。
『アルキメデスの大戦』第320話は、ハワイ真珠湾攻撃のため、機動部隊の各空母から飛び立つ攻撃隊の勇姿が描かれます。
機動部隊の各空母艦上甲板では、奇襲作戦に参加する搭乗員たちが集結し、作戦参謀から出陣前最後のブリーフィングを受ける。
搭乗員たちはこれまでに何百、何千と頭の中でシミュレーションした作戦の本番を前に皆が緊張し、高揚していた。
やがてブリーフィングも終わり、搭乗員たちは各々の機体に乗り込む……
本記事では、『アルキメデスの大戦』第320話[12月7日]のあらすじと感想を紹介していきます
※ここから先はネタバレ注意です。
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アルキメデスの大戦320話のあらすじネタバレ
【太平洋上・第一航空艦隊】
1941年(昭和16年)
日本時間 12月8日
ハワイ現地時間 12月7日
午前6時50分
第一航空艦隊の各空母艦上甲板では、奇襲作戦に参加する搭乗員たちが集結し、作戦参謀から出陣前最後のブリーフィングを受ける。
これまでに何十回、何百回と聞かされてきた作戦。
これまでに何百、何千と頭の中でシミュレーションしてきた戦闘。
その本番の時を迎え、搭乗員たちは皆が緊張し、また皆が高揚してもいました。
ある者は日本の未来を思い、またある者は家族の未来を思い、作戦の成功を信じて疑いません。
やがてブリーフィングが終わり、搭乗員たちはそれぞれ自分の機体へと乗り込み、発艦に備えます。
櫂の乗る第一航空隊・旗艦空母「赤城」も例外ではありません。
搭乗員たちは皆が士気高く、作戦の成功を信じて疑う者など誰ひとりいませんでした。
甲板では攻撃隊がエンジンを始動させたまま発艦待機。
やがて南雲司令官の号令で空母各艦は艦首を北に向けます。
合成風力による向かい風を形成し、戦闘機の発艦を助ける狙いがありました。
各空母が向きを変え終えると、艦橋からついに発艦の合図が出されます。
それに伴い各搭乗員たちはスロットルレバーを前方へ押し出し、ついに出撃!
甲板上はエンジン音とプロペラ音がけたたましく鳴り響き、他の全ての音をかき消します。
甲板の周りには帽子を高く上げて振る「帽振れ」で見送る沢山の兵士と将校たちの姿がありました。
彼らの声援と「帽振れ」に見送られ、空母「赤城」甲板から次々と発艦する零式艦上戦闘機。
上空で編隊を組み、やがてその姿は遥か彼方へと消えていきました。
第一次攻撃隊が全機無事に発艦完了。
時間にしてわずか15分足らず。
これはまさに搭乗員たちの日ごろのたゆまぬ努力と訓練の賜物といえました。
艦橋から攻撃隊の出撃を見届けた櫂は、高揚していた搭乗員たちとは正反対に、どこか冷めた複雑な思いを抱いていました。
【第一次攻撃隊・第二次攻撃隊】
指揮官・淵田中佐率いる第一次攻撃隊は30分後、機上にて夜明けを迎える。
零式艦上戦闘機43機
九九式艦上爆撃機51機
九七式艦上攻撃機89機
総数183機の搭乗員たちの多くは、今まさに上らんとする朝陽に、日本の夜明けを重ね合わせて見ていました。
午前7時15分
第二次攻撃隊が各空母から発艦を開始。
零式艦上戦闘機36機
九九式艦上爆撃機80機
九七式艦上攻撃機54機
総数170機が第一次攻撃隊の後に続きました。
【空母「赤城」】
午前7時35分
空母「赤城」艦橋では南雲司令官を筆頭に櫂を含む幹部将校たちが作戦の進捗状況を推察していました。
時間的に第一次攻撃隊はオアフ島が視界に入る頃。
米軍の索敵に遭わずに接近をしてくれることを祈る南雲でしたが、索敵機に遭わずとも米軍基地にはおそらく地上レーダー施設が建造されており、それが懸念材料となっていました。
これはイギリスが導入し、ドイツ空軍の空襲を事前に察知して迎撃に絶大な効果を発揮していた前例があったためです。
櫂は開戦前の、しかも夜明け前であることから、レーダーに感知されたとしても対応は遅れるはずであり、高速の戦闘機ならば奇襲は成功すると南雲に言って聞かせました。
問題は航空攻撃前に潜水艦部隊が発見されないことにあります。
それは特殊潜航艇が湾内に侵入し、魚雷攻撃を仕掛ける前に掃海艇に発見でもされれば敵の警戒は一気に高まってしまうからでした。
攻撃隊到着まで敵に見つかるか見つからないかは、まさに神のみぞ知る話。
櫂は艦橋から上る朝陽を見て、日米両国にとって運命の長い一日が始まったと思うのでありました……

アルキメデスの大戦320話の感想と考察
【真珠湾攻撃】
作中では戦闘機の搭乗員として第一次攻撃隊の司令官・淵田と栗田しか描かれてはいませんが、真珠湾攻撃にはそうそうたる指揮官がそろっていました。
制空隊には、ゼロ戦の審査にも関わった坂谷茂、中国戦線でゼロ戦の初陣を指揮した遠藤三郎など。
また空母「瑞鶴」「翔鶴」による第五航空戦隊は若年搭乗員が多いと危惧されていましたが、「翔鶴」の熟練搭乗員・高橋少佐が率いる急降下爆撃隊はそんな風評を吹き飛ばす戦果をあげています。
空母「瑞鶴」に関していえば、真珠湾攻撃で1機も損失機を出していません。
また、攻撃隊を出した後の上空直衛には、後に海軍のトップエースとなる岩本徹三がいました。
「アルキメデスの大戦」は戦争を美化する作品ではありませんので、これら戦中あるいは戦後に英雄とされた搭乗員や美談について描かれることはおそらくないでしょうね。
ですが英雄とまでいかずとも、この作戦を成功させるために、それこそ血のにじむような努力と鍛錬を搭乗員たちが何百回と繰り返し行っていたことくらい、もっと作中でしっかり描かれるべきだったのではないかなと思います。
櫂の考えと行動こそが作品の胆であったとしても、いくらなんでも兵士たちを雑に描きすぎではないかと。
さて真珠湾攻撃ですが、史実通りとなるには作中で予定されている戦艦部隊の作戦参加を中止させねばなりません。
第三次攻撃をしなかったことと併せ、この後作中ではどうやって描かれるのか注視したいと思います。
【アシスタント万歳】
今回、そのほとんどが空母なり戦闘機の絵で埋め尽くされており、櫂などの登場人物が描かれているコマの方が少ないです。
これはつまり、アシスタントさんが相当頑張ったということでしょう。
空母を描くのもかなり難しいですが、戦闘機を描くのは実はかなり大変です。
流線で構成される機体のパースをとるだけでもバランス取りが大変ですし、ゼロ戦、九九艦爆、九七艦功を描き分けるだけでも一苦労なハズ。
アシスタントさんも各々得意な画や力量も異なるでしょうから、量産兵器の統一感をくずさないためにかなり頑張った方もいたのではないでしょうか。
この後しばらくは戦闘の場面が多くなるはず。
つまり「アルキメデスの大戦」のピークはアシスタントさんたちの頑張りに掛かっているといえるかもしれません。
描けば描くほど絵は上手になります、頑張ってもらいたいですね。
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