2022年5月23日発売の週刊ヤングマガジン2022年25号で、『アンダーニンジャ』第73話が掲載されました。
『アンダーニンジャ』第73話は、「遁」の破壊工作成功により、晴れて太陽の下に躍り出ることが叶ったUNの姿が明らかとなります。
福耳な男、禍山はいかにも昭和な和風邸宅を訪れる。
邸宅で禍山待っていたのは「宗主」と山田さん、そして二人の男。
禍山が持ってきた「手土産」はNINに対して反撃の準備が整ったことを意味していた……
本記事では、『アンダーニンジャ』第73話[NINのリスト]のあらすじと感想を紹介していきます
※ここから先はネタバレ注意です。
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アンダーニンジャ73話のあらすじネタバレ
【練魔区・和風邸宅】
ぶっとい眉毛に福耳の男は、街の景色に目を奪われていました。
男が太陽の下を堂々と歩くのは久しぶりのこと、なんの変哲もないありふれた景色さえ、男には美しく映ったのです。
やがて男は練魔区にある一軒家の敷地内へと入りました。
その家は、いかにも昭和を感じる木造瓦屋根の一軒家。
家の庭は小振りな池があり、玄関の前には門かぶりの松が植えられており、小型和風庭園といった風合いでした。
男がふと上を見上げると、後付けで作られたと思わしき二階ベランダの柵に一羽のヒヨドリが。
男にはヒヨドリが太陽の下へ出られた自分たちを祝福しているようさえ感じられました。
敷石に沿って進むと、池で鯉と戯れる山田さんと出くわします。
山田さんは細かくキルティングが施された最新式と思わしき摩利支天を装着し、刀で泳ぐ真鯉をぶっ刺して遊んでいました。
山田さんは男を「禍山くん」と呼び、久しぶりの再会に笑顔。
禍山も笑顔で応え、”また”雲隠兄弟を倒した山田さんを祝福しました。
禍山は雲隠の話題つながりで、九郎に切り取られた山田さんの鼻の具合を心配します。
しかし山田さんは鼻が無くなったことで死角が減ったと喜んでさえいました。
不具合な顔面事情も全く意に介さず、笑顔さえ見せる山田さんに畏怖の念を抱くとともに、山田さんなら”さもありなん”とも思う禍山なのでありました。
【UN】
ガラガラガラ、と玄関引き戸を開け、禍山は邸宅内へ。
家の中に土足のまま上がると、拙いピアノの音が家中に漏れ聞こえていることに気づきます。
絶望的な下手くそなその音色から、演奏者が誰であるかおおよその見当はつきました。
禍山は音色を辿って庭の池が真正面に見える部屋へと入ります。
室内で禍山を待っていたのは…
背筋をピンと伸ばした姿勢でソファに座り、凛とした佇まいの女性。
大きな黒いフード付きコートを頭からすっぽりと被ったギョロ目の男。
絶望的な音色を奏でるピアノ奏者のややロン毛男。
窓の外には5月らしく真鯉遊びに興じる山田さん。
ギョロ目と違い、凛とした女性とピアノ奏者は山田さん同様に細かくキルティングが施された摩利支天らしき服を装着していました。
禍山が遅れてしまったことを謝罪。
すると凛とした女性は禍山を見つめ、感慨深げに再会が3年ぶりであること、太陽の下にまた出れて嬉しいことを伝え、また禍山が息災であったのかも尋ねました。
禍山はその言葉がよっぽど嬉しかったのか、薄っすらと目に涙を滲ませ”お待たせしました”と言葉を詰まらせながら返答。
女性を「宗主」と呼び、「遁」を落とせたことを報告しました。
ギョロ目の男はこの和風邸宅をどうやって調達したのかを禍山に尋ねます。
邸宅は元練魔区長の東からの提供であること、
提供理由は、東の息子が講談高校爆発事故のあった日にNINの抜け忍によって首が刎ねられ、その首もNINの車に何度も轢かれたことに対するNINへの復讐心に駆られたものであることを説明。
続けて禍山はこの東を利用してNIN被害者の会を立ち上げる予定であることを話して聞かせました。
宗主は被害者の会を立ち上げる理由を訊ねます。
理由は会を使ってNINの今までの悪事を明るみにし、タブー視されていたNINを批判できる世論を形成することにありました。
横で聞いていたギョロ目の男は”気の遠くなる話”だと揶揄。
これに対し禍山は同時に実力行使でNIN被害者の仇討ちを手助けすることで世論形成を早められると説明します。
【新型ドローン手裏剣】
禍山はおもむろにポケットから正方形の物体を取り出し、テーブルの上に置きました。
正方形各面には小型プロペラが施されており、一目でドローンの一種だとわかります。
禍山は桐生が命を賭して入手した「遁」のNIN個人情報データと合わさることで、このドローン手裏剣が完成に至ったと語り、桐生の献身に思いを募らせました。
禍山の言葉を聞き、宗主もおかげで多くの仲間が救われたと桐生の功績を称えました。
禍山はこの新型ドローン手裏剣によってNINの多くの忍が潜伏せざる得なくなると断言し、つまり反撃の準備が整ったと説明。
しばしの沈黙の後、宗主は静かな口調で反撃を始めると明言するのでありました……
【九朗のいたアパート】
いつものように、まるで泥棒を挑発するかのように下着を窓の外に干す川戸さん。
すると外階段下にボロボロになって戻ったテオとシノブ(猫平)を目にします。
微妙にカスタマイズされたテオの外観をイジっていると、階段支柱をスルスルと下りてくる人影が。
下りてきたのは十郎でした。
川戸さんと十郎は互いに言葉を交わすでもなく軽く会釈だけ交わすのでありました……
アンダーニンジャ73話の感想と考察
【あの和服の女性は宗主?山田さん?】
唐突に、これみよがしに、読者に謎を突きつけて「なんでしょね~?」と気を持たせるだけ持たせて放置という構成は長編の漫画や小説では定石。
謎はいずれもその時点で意味がわかりませんが、以降小出しにされるヒントを経て、やがてその意味が明かされます。
「アンダーニンジャ」はこの傾向がかなり強く、作品制作初期の段階でしっかりとプロットが練ってあったことが窺えます。
しっかりプロットが練ってあればこそ、読者に謎を突きつけて放置という手段が取れるってもんですよね。
付け焼刃の謎では整合性を取ることに時間もページも取られてしまうでしょうし。
今回、UNの「宗主」と呼ばれる女性が初めて作中に登場し、ふとそんなことが頭をよぎりました。
宗主の凛とした佇まいのシルエットを見た時、すぐに14話で吉田昭和先生の枕元に現れた和服の女性と重なりました。
でも同一人物なのでしょうか。
吉田は講談高校事件日の朝、アパート敷地内で山田さんとすれ違った時、山田さんに14話の和服女性に感じた冷たい殺気と全く同じものをすれ違いざま感じ取っていました。
忍者が気配を消していても忍者の存在を感じ取れるようにまでなっていた吉田です。
そこまで鋭敏な吉田のリアクションと反応なのですから、和服の女性の正体が山田さんだったと私は考察しました。
だけど今回「宗主」の佇まいを見るにつけ、その考えに自信が持てなくなってしまいましたね。
ただ、「宗主」は太陽の下に出るのが久しぶりと話しておりましたので、やはり和服女性は山田さんの可能性の方が高そうではありますが…。
【宗主】
その「宗主」と呼ばれる女性?ですが、顔がNINの佐々魔とよく似ています。
単に作者が描き分けが苦手なことによる結果だけなのかもしれませんが、この類似は気になるところ。
猿田がNINから逃亡して件の墓場に来た時、猿田は遠くの墓の影にオジサン型摩利支天を装着した佐々魔の姿を見ていました。
これが何を意味しているのかは全然わかりませんけれど、宗主の顔が佐々魔とよく似ている事と何らかの関係性があるのかもしれませんね。
似ているだけで何か関係があると考えるのはあまりに短絡すぎ。
もちろん私もそう思っています。
ですけれど、そもそもこの作品の主人公一族がクローン集団である可能性が高く、どうしても見た目で判断しがちになってしまいます。
そうやって読者を混乱させることが作者と編集の狙いだったりして。
佐々魔と宗主、鈴木と野口、川戸と純愛、日比兄妹、あえて似せて描いているのか、似ちゃってしまうのか、花沢先生に聞いてみたいけど、失礼か…。
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