2022年5月16日発売の週刊ヤングマガジン2022年24号で、『アルキメデスの大戦』第313話が掲載されました。
『アルキメデスの大戦』第313話は、「大和」を作戦から外そうと奔走する平山と、責任を押し付け合う海軍幹部たちの姿が描かれます。
平山は艦政本部長・岩崎を引き連れ海軍省に乗り込む。
作戦を統括する軍令部に押しかけ、軍令部部長・福留、鈴木の両者に直談判。
福留は呆れながら平山の訴えを一蹴しますが……
本記事では、『アルキメデスの大戦』第313話[たらい回し]のあらすじと感想を紹介していきます
※ここから先はネタバレ注意です。
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アルキメデスの大戦313話のあらすじネタバレ
【海軍省】
1941年 12月2日
19時45分
すっかり陽も落ち、電灯の明かりが街や家々を灯す頃、造船中将・平山と艦政本部長・岩崎の二人は海軍省に到着。
車中で決めた作戦通り、岩崎は軍令部第一部長・福留のもとへ向かい、平山は軍令部第二部長・鈴木のもとへと向かいました。
【海軍省・第一軍令部】
岩崎は福留と面会し、平山がまもなくここに来ることを伝えました。
なぜ造船技師である平山が?と訝しがる福留に、実は面倒なことに…と岩崎が言いかけた時、部屋のドアをノックする音が。
部屋に来たのは、平山と鈴木の二人でした。
鈴木は平山から福留が呼んでいると聞き、参じた理由を伝えます。
読んだ覚えのない福留は一瞬なんのことかとキョトンとしますが、先ほど岩崎が言いかけた”面倒なこと”とはこういうことかと状況を理解。
福留は平山らを席に座らせ一旦落ち着かせ、このように自分を含め軍令部・部長の二人を捕まえ、いったい何の用件なのかを平山に尋ねました。
平山はアポなし来省を詫びるでもなく、口を開くや否「ハワイ・オアフ島奇襲作戦」に参加する戦艦部隊に攻撃中止命令を出して部隊を旗艦させてほしいと願い出ます。
福留も鈴木も予想だにしなかった平山の言葉にキョトン。
は?なに言ってんのこの人…といった感情がハッキリ表に出る呆れ顔で平山を見すえ、冗談はやめてほしいと申し出を軽くいなしました。
福留が冗談でしょ?と、笑い話にしたくなるのも無理はありません。
命令が下り、すでに動き出している作戦を中止するなど、余程のことがない限りできないことは将校ならば理解しているのは当然のことであったからです。
そもそも平山には作戦に口を挟む権限はありません。
福留はこれら理由を説明し、申し出を無理だと一蹴しました。
が、福留の反応など想定内、平山は顔色一つ変えず動じません。
平山は福留が過去に日本海海戦の再現を夢見ていたことを持ち出し、もしハワイで多数の戦艦を失った場合、米国との艦隊決戦ができなくなるがそれでもいいのかと感情に訴えます。
鈴木に対して海軍の軍人ならば誰も何も逆らえない人物、東郷平八郎の名前を持ち出し、戦艦焼失させた鈴木をはたして東郷元帥は赦すだろうか、など言いたい放題。
海軍内で神格化されていた東郷平八郎、実は鈴木の親戚でもありました。
片や若き日に抱いた夢、片や神格化されている親戚、どちらもハワイ作戦に向かっている戦艦部隊と結びつけるには無理があります。
福留も鈴木も、そして平山自身もそれは百も承知。
それでも平山は面倒くさい頑固ジジイをとことん演じることで、福留と鈴木が上司である軍令部次長に下駄を預けるよう誘導していたのでした。
この平山の頑固ジジイぶりは見事に功を奏します。
福留も鈴木も平山の頑固ジジイっぷりに辟易。
福留は部下を呼び寄せ、伊藤に連絡を取って軍令部まで来てもらうよう命じました。
しばらくして伊藤が現れます。
伊藤は平山の話を一通り聞き終えるとしばし考え、訴えは一理あるとしながらも作戦中止は無理ではないかとの考えを口にしました。
それでも平山は食い下がりません。
すると福留が横からボソリと、軍令部総長・永野の意見を伺ってはどうかと提案します。
伊藤は渡りに船とばかりに、すぐさま福留に同調。
こうして平山は軍令部総長に直談判できる機会を得、伊藤以下、軍令部の幹部たちは総長へお鉢を回すことで面倒を回避したのでありました……
【空母・赤城】
空母機動部隊に真珠湾攻撃命令が下され、各艦ではその後の作戦説明が作戦参謀から艦長をはじめ将校士官らに伝えられていました。
空母「赤城」の艦内では、櫂が真珠湾攻撃からハワイ・オアフ島上陸占拠までの流れを説明します。
真珠湾奇襲後、戦艦部隊・空母機動部隊はともにトラック島に入港し、速やかに燃料など補給して柱島まで戻り帰港。
柱島でミッドウェー攻略部隊を載せた輸送船2隻と合流したのち再び出航、上海より陸軍兵12万を乗せた戦艦部隊と洋上で合流し一路ハワイへ。
ハワイ沖到着後、空母部隊の援護のもと、戦艦部隊は乗船している陸軍をハワイ・オアフ島に上陸させ、基地機能及び施設を占拠する。
噂には聞いていたものの、実際に作戦内容を聞き、将校らに言葉はありません。
説明する櫂の自信満々な表情とは正反対に、南雲長官と将校らの顔には不安の色が滲み出ていました……

アルキメデスの大戦313話の感想と考察
【東郷元帥】
東郷平八郎が海軍内で神格化されたように、陸軍にも神格化された人物として乃木大将がいました。
二人はなぜ「神」とされたのか。
乃木大将が神格化されたのは戦果よりも、その死に方による衝撃が大きかったからだと思います。
また乃木大将が漢詩に精通していたことも少なからず影響したかもしれません。
一方、東郷平八郎は違います。
純粋に日露海戦をほぼパーフェクトで勝利させた実績によって、「神」扱いとなっていったと思われます。
さらに東郷は日米開戦時まだ存命で”元帥”でした。
元帥となると軍に終身雇用されたようなもの。
櫂のいるこの時代、少なくとも統合に対する海軍内での認識は「生き神様」といったところでしょうか。
今回、平山はこの「生き神様」である東郷を陰に陽に使って福留と鈴木に作戦中止を迫りました。
その結果、二人は強く反論できなくなり、次長の伊藤にお鉢を回すハメになりましたね。
これが何を意味するかというと、それほどまでに海軍にとって日露海戦と東郷平八郎は別格扱いなのだということ。
いわば批判を許さない、批判の対象外。
日露海戦は「聖域」であり、東郷平八郎は「神」ってわけです。
平山はそれを逆手に取って「聖域」と「神」を利己的利用したのですね。
すべては愛しい戦艦「我が子」、違った、戦艦「大和」を守りたいがため。
さて次回、平山は軍令部総長・永野に対しても「神」を持ち出すのでしょうか……
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