2022年1月8日発売の週刊ヤングマガジン2022年6号で、『アルキメデスの大戦』第296話が掲載されました。
『アルキメデスの大戦』第296話は、対日最終カードを切る覚悟を決めたルーズベルトの様子が描かれます。
ホワイトハウスでは日本が南部仏印への進駐を決定したことへの対抗処置として、石油輸出の禁止が半ば決まる。
ルーズベルトとしては、まずこの処置を日本側にチラつかせることで日本の出方を窺うつもりであった。
後日、国務次官サムナーは日本側に石油輸出禁止を切り出すよう長官ハルに命じられるが……
本記事では、『アルキメデスの大戦』第296話[ルーズベルトの覚悟]のあらすじと感想を紹介していきます
※ここから先はネタバレ注意です。
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アルキメデスの大戦296話のあらすじネタバレ
【ホワイトハウス・大統領執務室】
ルーズベルト大統領をはじめとする政府と、陸海軍の代表による会議がホワイトハウスで行われました。
議題は現在の欧州とアジア情勢の確認が行われ、それぞれに対する米国の対処。
大統領ブレーンであるガードナーは、南部仏印進駐を決めた日本を断罪し、しかしこれは米国にとって絶好の好機であるとルーズベルトに進言しました。
米国が巻き込まれる形で戦争に参戦、つまり日本から米国に戦争をしかけてこさせる好機だと。
それは南部仏印進駐は対日経済制裁の最終カードである石油輸出禁止に踏み切るには十分な理由になるからでした。
石油のほとんどを米国からの輸入に頼っていた日本としてはもし石油を止められでもしたら、たとえ米国が敵になろうと自存のためには戦うしかありません。
このことはガードナーに言われるまでもなくルーズベルトや政府高官たちも十分よくわかっていました。
しかし実際に戦争ともなれば敵味方に多くの犠牲者が生まれ、国の指導者は戦争の責任が問われることになります。
そのためルーズベルトは確実に米国が勝つと頭では分かってはいても、どこか踏ん切りがつかないでいたのです。
そこでルーズベルトはいきなり日本へ石油輸出禁止を通告するのではなく、チラつかせる程度に石油輸出禁止を日本側へ伝えることを国務長官ハルに指示。
これで日本が南部仏印進駐から撤退すればとりあえず日本との戦争は回避され、欧州戦線へ集中できるとルーズベルトは考えました。
ガードナーはここに至ってまだ対日開戦を決められず、日本にある意味チャンスまで与えようとしているルーズベルトに対してイライラが募ります。
会議はルーズベルトがハルに指示を出して終了し、高官たちは執務室を後に。
ガードナーは退室間際、大統領が戦争をする覚悟ができていなかったとは残念だと呆れ、さらにカイ・タダシと会う前までの大統領は覚悟ができていたのに…と、軽く憎まれ口を叩きながら執務室を後にしました。
軽口を叩いて出て行ったガードナーに、勝手なこと言いやがってと文句の一つでも言ってやりたいところでしたがルーズベルトはグッと我慢。
執務室で一人になったルーズベルトは、櫂の名前が出たこともあって櫂とマンツーマンで日米和平交渉をした時のことが頭に思い浮かびます。
交渉時、ルーズベルトは櫂に約束は必ず守れと念を押して仮調印にサインまでしていました。
しかし結局「大和」が火災で焼失したこで和平合意は頓挫。
ルーズベルトとしては顔に泥を塗られたに等しく、拭っても拭いきれない汚点を櫂によって付けられたとの思いだったのでした……
【アメリカ国務省】
国務長官ハルは次官のサムナーを呼び出し、日本の野村大使との会談で対日石油輸出禁止を切り出すように厳命します。
これは大統領直々の要請だから必ず日本側に伝えるようにと。
サムナーは日本側に伝えるにあたって表現はどうしたらいいかをハルに尋ねました。
強く迫るのか、禁止も辞さず程度にとどめるのか。
ハルはこれに対し、サムナーの裁量に任せると明言を避けました。
【アメリカ国務省・7月22日】
国務次官サムナーは駐在大使の野村吉三郎と会談を持ちます。
サムナーは日本の南部仏印進駐に強く抗議し、野村は進駐は地域の安定と平和のためであると説明。
話し合いは平行線のまま膠着し、サムナーはここで石油輸出禁止カードをチラつかせる手段に打って出ます。
サムナーは石油輸出禁止が決定事項と思われぬよう、柔らかい言葉使いと表現で示唆する程度に留めておくことにしました。
”南部仏印進駐を日本が止めなければ石油の輸出を停止せざるをえない状況がくる「かも」しれないよ”
サムナーとしてはあくまで軽めに言ったつもりでしたが、野村はそうは受け取りませんでした。
日本への石油輸出停止と受け取った野村はこれで戦争決定だと激しく動揺。
野村の狼狽ぶりを目の当たりにしたサムナーは軽く言ったつもりなのにオイオイと焦り、こちらもまたオロオロ狼狽するのでありました……

アルキメデスの大戦296話の感想と考察
【国の死活問題】
今回一話まるまる使って石油の有無が日本にとっていかに死活問題かが描かれていたように思います。
これまでも作中で櫂の口から日本にとって石油がいかに重要か語られてもいました。
1940年の対米石油依存度は93%といわれています。
これを禁輸された場合、日本が闌印の油田地帯を占領して確保する手段に打って出るのは、当時の状況下では止むに止まれぬ選択だったのではないでしょうか。
櫂が米国から禁輸措置を取られかねないと危惧し、日本が北進路線を選ぶ道を模索していた理由がここにあります。
地下資源が皆無と言っていい日本にとってエネルギー問題は80年前に限らず現在も変わらぬ命題ですね。
【野村吉三郎大使】
サムナーの言葉を野村は米国が石油輸出禁止を決めたと受け取った様子でした。
サムナーはまだ本決まりじゃないよってニュアンスの言葉を使ったつもりでしたが野村にはそう聞こえなかったのでしょう。
これでおそらく野村は日本に米国は禁輸決定を決めたと報告するに違いありません。
当然報告を受けた日本は対抗手段であり自存手段を考えねばなりません。
それが先ほど書いた闌印油田地帯の占領となるわけです。
サムナーがもし書面で通達していたら野村は米国が出方を窺っていることを文面から汲み取れたのでしょうか。
作中のあの感じでは無理っぽいですよね。
野村の誤訳が原因で日本が南部仏印進駐を早めたのであれば責任は重いのではないでしょうか。
もしかしたら日本軍の行動に何かしらの影響を与えられたかもしれないのですからね。
作中で今回の話は7月22日の事となっていました。
陸海軍が南部仏印に進駐したのは7月28日のことです。
いよいよ「ABCD包囲網」といわれる対日経済封鎖が日本を追い詰める展開が待っていそうです。
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