2021年11月22日発売の週刊ヤングマガジン 2021年52号で、『アルキメデスの大戦』第291話が掲載されました。
『アルキメデスの大戦』第291話は、「ゼロ戦」の改良を求める櫂と、改良は必要ないとする山本との議論が描かれます。
櫂は山本が発した衝撃の言葉に落胆の色を隠せない。
山本は櫂の要求は無いものねだりに過ぎないと、日本の現状を理由にしてこれを喝破。
資源力を理由に要求を拒否された櫂はそれを云うならと……
本記事では、『アルキメデスの大戦』第291話[決裂]のあらすじと感想を紹介していきます。
※ここから先はネタバレ注意です。
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アルキメデスの大戦291話のあらすじネタバレ
【デジャヴ】
「ゼロ戦」の防御能力の低さを改善させるべく、櫂は山本に「ゼロ戦」改良を海軍から堀越たち三菱に命じてくれるよう頼みました。
しかし山本はこれを断ります。
その際に山本が放った”要は敵の弾に当たらなければ良い”という言葉に、櫂はまるでデジャブでも見ているかのような感覚に。
それは以前にも敵に対して運動性と速度で勝てれば搭乗員の安全確保は必要ないと、全く同じセリフを山本の口から聞いていたからでした。
櫂は今もまだ防御不要を信じて疑わない山本に失望の色を隠せません。
【山本の言い分】
櫂が自分に対して失望の念を抱いたことを敏感に感じ取った山本。
櫂の態度がどこか小馬鹿にしているかのようにも思え腹の虫がおさまりません。
平静を装い、櫂の言っていることは”ないものねだり”にすぎないと切り捨てました。
しかし、そんなことはないと櫂が食い下がったことで山本は一気にヒートアップ。
声を荒げて今の日本に改良に費やせる余裕などないと喝破します。
櫂の要求する「ゼロ戦」改良の骨子は二つで、大型発動機への変更と防御装置の装備。
この二つを施した重量級戦闘機に改良するには鉄やアルミ・ニッケル・ゴムなど多数の資源が必要であり、何より重量級戦闘機の燃料となる石油は不可欠です。
しかし対日輸出制限で包囲網を形成された今の日本の現状ではこれらは容易に手に入る物ではありません。
そもそも日本は鉱物資源に乏しい国。
少量の材料で大量に生産できるものを造る以外に現状日本には手立てがありませんでした。
だからこそ海軍は軽量で航続距離の長い戦闘機を堀越らに発注したともいえたのです。
山本はこれら理由をコンコンと言い聞かせますが櫂は理解を示すものの引き下がりません。
カチーンときた山本はさらにヒートアップ!
そもそも櫂の考案した作戦は短期決戦であり、人員損耗は考慮せずとも良いはずだと怒鳴り散らします。
長期決戦となれば国力差で負けるのは必定だからこそ、真珠湾攻撃で圧倒的勝利を収める作戦なのではないのかと櫂に詰め寄りました。
短期決戦ならば重視すべきは防御ではなく攻撃だと。
これにはさすがの櫂も言葉を詰まらせますが、冷静になって話を聞いてほしいと山本に頭を下げ、防御装備の重要性を再び訴えました。
【櫂の言い分】
櫂は戦争が万が一長期化した時のことも考えるべきだと山本に訴えました。
防御装備の無い戦闘機では当然搭乗員の致死率は上がり、熟練飛行兵の喪失に対し新人育成が追いつかなくなることは必至。
戦争が長期化すれば経験不足の乗員でも戦場へ送らざるを得ません。
戦闘の経験も無い飛ぶのがやっとの新米飛行兵に最大限の軍事効果を求めるとするならば、残された攻撃手段は体当たり戦法。
櫂は最悪を想定し、このような非現実的戦法を軍が取ることを避ける意味でも改良が必要なのだと強く訴えたのです。
搭乗員の命を守ってこそ戦えるのであると。
これには今度は山本が言葉を詰まらせました。
櫂の言っていることが間違ってはいないことを山本とて理解はしていたのです。
【決裂】
櫂は言うだけ言って再び頭を下げ、搭乗員の命を守るために「ゼロ戦」の早期改良を命じてくれるよう懇願します。
しかし山本の答えはNO。
もう決まったことだと言い、部屋から出るよう櫂に命じました。
櫂は落胆した面持ちのまま無言で部屋を後に。
この時、山本は櫂を疎ましく感じている自分に気づくのでした……
アルキメデスの大戦291話の感想と考察
【日本の資源】
今回作中で櫂と山本が熱く議論を交わしていたのは日本の「資源」について。
山本は物質的な資源不足を訴え、櫂は人員的な資源不足を
訴えていました。
けどこれ、結局のところ日本は両方とも絶対的、慢性的に不足しているのです。
もちろんそれは櫂も山本も理解しているはず。
山本はだからこそ何としても短期決戦を成功裏に終わらせるため「資源」を有効に使うのだというわけです。
是が非でもという思いが強いからこそ短期決戦勝利を疑わないし、疑いたくないのも根底にあるかもしれません。
櫂は短期決戦が100%成功しなかった場合、つまり結果的に戦果不十分となって長期戦になった場合を考え「資源」を大事に使おうよというわけです。
どちらも「資源」に対する考えや思いは実はある程度共通しているのがわかります。
それでも櫂からしたら山本は楽観的に見え、山本からしたら櫂は悲観的で気概が無く見えるのでしょう。
結局、議論は平行線のまま、立場が上である山本の主張がまかり通ることとなる訳ですね。
ますます櫂と山本の溝が深くなりそう。
【特攻】
今回ちょっと驚いたのが、櫂の頭の中に戦法として「特攻」が選択肢にあったことでしょう。
実践するしないは別の話だとしても、生粋の軍人でもない櫂の頭に非合理な「特攻」が戦法としてあったとは……
これは戦国時代から日本人に刷り込まれてきた忠義による死の美徳感情を戦事に利用できることを見抜いていたからに他なりません。
山本と櫂、どっちが冷酷なんでしょうね。
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