2021年10月4日発売の週刊ヤングマガジン2021年45号で、『アルキメデスの大戦』第284話が掲載されました。
『アルキメデスの大戦』第284話は、櫂が再び対米戦回避に向け決意を固める様子が描かれます。
ドアの外にいたのは暁新聞の記者、稲垣。
丹原は稲垣を追い払いますが、瀬島は稲垣をスパイではないかと勘繰る。
瀬島から日本におけるスパイ事情を聞かされた櫂はマキコのことを思い出していた……
本記事では、『アルキメデスの大戦』第284話[諜報活動]のあらすじと感想を紹介していきます
※ここから先はネタバレ注意です。
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アルキメデスの大戦284話のあらすじネタバレ
【スパイ疑惑】
ドアの外で立っていたのは暁新聞社の記者、稲垣でした。
丹原はこの階に記者の立ち入りは禁止のはずだと注意し、稲垣を追い払います。
部屋に戻り記者だったことを説明すると、瀬島は話を聞かれたのではないか?スパイではないか?と稲垣を疑いました。
スパイとまで言い切るのは難しいと話す丹原に、用心に越したことはないと、身辺調査を行うよう忠告します。
瀬島はなぜ自分がこれほど情報漏洩にピリピリしているかを説明。
それは最近都内からソ連方向に向けて微弱な電波が送信されていることが判明したからでした。
特別高等警察、特高はこれを帰国した米共産党員による諜報活動と疑い捜査。
捜査線上には駐日独大使館関係者や新聞記者の名前も挙がり、特高第一課の他に外事課までも動いていました。
米共産党経由でソ連邦労働赤軍本部第四局の指示を受けて日本国内に諜報網を構築しているのではないかとし、内偵捜査を進めていたのです。
丹原の話では外務省にも駐日独大使館員との接触は注意するよう通達が来ており、噂では近衛首相の関係者にも監視対象者がいるとのこと。
外務省でも近衛首相の動向には違和感を感じていました。
なぜ千載一遇のチャンスともいえた対中トラウトマン和平工作を打ち切ったのか理解できなかったのです。
近衛首相の意思決定の裏に助言者の関与が疑われており、それがもし事実ならば日中戦争の泥沼化はソ連邦の企てともいえます。
櫂はその話を聞いてにわかには信じられませんでした。
櫂と近衛は1月に政府連絡会議で会っており、その際に近衛は和平を強く望んでいたからです。
近衛にまつわる噂が話半分だとしても、政府要人にまで諜報網が触手を伸ばしている可能性があることに少なからずショックを受けていました。
この時、ふと櫂の頭をよぎったのは非業の死を遂げたマキコの姿。
マキコが死をもって櫂に託した日米和平。結果的にそれを実現できなかったことへの悔しさと後悔が櫂の胸を締め付けます。
【島国日本】
瀬島は情報に関して日本は”ザル”であると断言します。
マキコの件もあり、櫂もこの意見には全くの同感でした。
瀬島は”ザル”な理由を日本が島国で緊張感が乏しいからだと話します。
同じ島国でもイギリスは他のヨーロッパ諸国同様に大航海時代に先を争って世界へ進出。
かたや日本は鎖国し、外国との関係を限定。
新たな情報を積極的に掴もうとしていたイギリスと、自ら掴もうとしなかった日本では差は歴然。
開国したといってもまだ80年あまりにすぎず、依然外国に対する国民の意識は低いまま。
交わされる情報に鈍感でその重要性も感じないのが現状なのだと瀬島は訴えました。
櫂はその情報の疎さが軍や政府にまで及んでいることを嘆きます。
軍や政府は情報を軽視し分析を軽んじ、科学的知見に欠けるため解決策は非合理的で非論理的なものしか導き出せないと今の現状を訴えました。
今度は瀬島がこの意見に同意。
軍は収拾がつかなくなると破れかぶれになって最後は精神論を振りかざし放り投げるしかないと呆れます。
日本という国全体が緩んでいるような今の状況で世界を相手に戦えることなど出来るわけがないと櫂も瀬島も思っていました。
【決意】
瀬島たちとの話し合いで、櫂は改めて日本はアメリカと戦争などしてはならないと強く思うに至っていました。
瀬島の示した対米回避策が実際かなり困難な道であり、成功の可能性も低いことは櫂もわかってはいましたが、現状この策に懸ける以外に道は無いと腹を括ります。
櫂は瀬島に対米開戦回避の為に協力することを伝えました。
自分たち3人が再び一致協力して米国との和平を実現させなければならないと。
瀬島はその言葉を聞き、櫂に海軍を北進論に改めるよう強く働きかけてくれることを求めました。
これを櫂は快諾します。
これが対米戦回避のラストチャンス、海軍首脳たちの説得に全力を尽くすことを約束するのでした……

アルキメデスの大戦284話の感想と考察
【櫂の安請け合い】
なんだか瀬島に上手いこと乗せられた感が否めません。
これだけすんなりと櫂が瀬島の案に乗っかったのは、日本が今切羽詰まった状況であること、瀬島の案に合理的な説得力が見られたことが理由でしょうか。
いずれにしてもそんな簡単に行くような策ではありません。
なぜか瀬島は陸軍の方は北進で大丈夫な感じで話していましたけれど、東條をはじめとした幹部連中とコンセンサスは取れているのでしょうか。
作中ではこれまでそんな場面はありませんでした。
いち作戦参謀である瀬島の力がどれほどのものなのかはわかりませんが、日米和平会談の時のようにまたエサをチラつかせて幹部たちを誘導するのかもしれませんね。
問題は櫂の方です。
安請け合いしてしまったのではないかと心配になります。
櫂は瀬島ほど融通も利きませんし、もともと軍人ではありません。
軍人の性質をわかりかねている節がこれまでもありましたので、瀬島のように軍人が好むような誘導などできるのでしょうか。
権力欲の強い嶋田とかみたいな幹部は何とかできたとしても、すでにやる気満々状態な山本長官みたいな軍人気質の幹部たちをどうやって説き伏せ誘導するつもりなのでしょう?
そこで、櫂はハワイ攻略作戦に代わる新たな作戦を提示することが必要になるのではないかと考えます。
つまり新たな活躍の場を提供するということです。
そこで平山「大和」の活用法も提案したら面白いですね。
【近衛首相の疑い】
ゾルゲの名前は出てきませんでしたが、代わりに近衛の名前が出てきて「おっ」と思わされました。
作中では比較的温厚でそれなりにバランスの取れた人物として近衛は描かれていましたので、近衛のことには触れないのかと思っていたからです。
史実では近衛は諜報員との繋がりを疑われており、近衛失脚後に首相に就いた東條は近衛を徹底的に調べるよう特高に圧力をかけたとされています。
結果的に近衛は「記憶にない」の一点張りで諜報員との関係を隠し通したわけですが、おそらくというかほぼ確実に諜報員と何らかのやり取りがある関係性であったことは疑いようがありません。
それでも、まあ近衛は近衛で売国とかそんなんではなく、日本のためにソ連に近づいたのではないかと個人的には思っていますけれど…。
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