2021年1月18日発売の週刊ヤングマガジン2021年8号で、『アルキメデスの大戦』第249話が掲載されました。
『アルキメデスの大戦』第249話は、綺麗ごととも取れる精神論で戦争を語る南雲ら将校に櫂が説教くれる様が描かれます。
演習が終わり、統監室に呼び戻された櫂や黒沼ら将校たち。
黒沼は日本軍の敗北を山本に詫びる。
すると横から南雲が詫びる必要などないとばかりに演習の勝敗にケチをつけ始めるのであった……
本記事では、『アルキメデスの大戦』第249話[物言い]のあらすじと感想を紹介していきます
※ここから先はネタバレ注意です。
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アルキメデスの大戦249話のあらすじネタバレ
【兵棋演習・赤軍(米軍)室】
統監室より、赤軍勝利確定の判断が下されたことが知らされる。
櫂はこの判定に一安心。
赤軍将校たちは皆 口には出さないまでも、連合艦隊の全作戦を司る”あの”黒沼参謀を圧倒的勝利で打ち破るとは…と、櫂に感嘆の思いを抱いていました。
【統監室】
兵棋演習が終了。
総括のため青軍・赤軍に別れ別室にいた将校たち全員が統監室に呼び戻されました。
長机を挟み、山本や南雲ら統監部将校たちと対峙する青軍・赤軍将校。
櫂と黒沼は横に並び、軽く視線を交わして無言で会釈した後、二人は山本ら統監部に一礼。
先に黒沼が口を開き、青軍の敗北を率直に詫びました。
その時、南雲が声を上げ山本に進言。
それは青軍の敗北を惨敗と決めつけるのはおかしいのではないか?という内容のものでした。
南雲は櫂の指揮した赤軍の戦い方に疑念を抱いていたのです。
南雲が言うには、
赤軍は壊滅的な打撃を被るとわかっていながら第一任務部隊を囮として使った戦法は姑息で卑劣であり、軍人として恥ずべき行為だというのです。
帝国海軍とはその名にふさわしい戦い方でなくてはならず、それに照らし合わせれば赤軍の一方的勝利とは認め難いというおかしな論理。
この南雲の論理というか帝国海軍の論理に青軍の将校たちも同調。
囮になる部隊はたまったものではなく、空母2隻を撃沈した青軍にも戦果はあったとし、赤軍の大勝利とは言えないと口々に発言。
ここまで横で黙って聞いていた櫂。
やや呆れ口調で南雲や同調した青軍将校たちに向かい、”皆さん、戦争ですよ?”と問いかけました。
櫂の無礼とも取れる物言いに南雲は激昂し、そんなもの分かっとるわ!と大声で櫂に怒鳴りつけます。
しかし櫂は全く動じません。
南雲を真っすぐに見据え、戦争に犠牲は不可欠であり、それこそが戦争なのではないですか?と追い打ち。
キィ―――っとなった南雲はたまらず立ち上がり、”生意気な!”と食って掛ります。
戦争に犠牲はつきものだとしても、空母2隻と数千名の命を失っている以上、大勝利ではないし、櫂のやった作戦は人道的にも無理があると断言。
これに櫂は、アメリカという国について日本の軍人だけでなく日本人は認識が甘すぎると指摘。
アメリカは空母2隻と数千名の命と引き換えにハワイとミッドウェー島を守ると断言返し。
利のため、目的を達成するためならば手段を選ばないのがアメリカであり、祖国を守るためならば自らが盾となって戦うのがアメリカ人だと説明。
まるでアメリカ人ばりにアメリカを語る櫂の妙な説得力に押され、南雲も青軍将校たちも言葉がありません。
ここで櫂は畳みかけるように、アメリカと日本とでは戦うことのリスクの大きさが全然違うことを力説します。
たとえば空母2隻の損害もアメリカと日本とでは捉え方が全く異なることを指摘。
資源に乏しい日本ならば当然大打撃。
しかしアメリカにとっては軽微とは言わずも決して大打撃ではない。
この国力差による意識の差が作戦に与える影響は非常に大きく、両者が戦えば結果はどうなるか今一度考えて欲しいと、櫂はこの場にいる全員に訴えました。
アメリカとの戦争は圧倒的物量との厳しい戦いであり、決して安易に始めてはならないと。
押し黙る将校たち……
反応がどの将校から何も窺えないため、櫂はさらにアメリカとの戦争を回避するように念を押そうと語りかけはじめたその時、
突然山本が”もうそれ以上は言わなくていい”と櫂の話に割って入りました。
そして兵器演習を終了すると皆に告げ、解散を命じます。
途中で突然話を打ち切られた櫂は山本の行動に愕然。
それはこの演習結果を受け、さすがの山本も米国との戦争を回避しなくてはならないとの認識に改めてくれたはずだとの思いがあったからでした……

アルキメデスの大戦249話の感想と考察
今回のラスト、山本が櫂の話を打ち切ったのは無理もないことだと思います。
山本は指揮官で、大勢の軍人を預かる身。
さらに万が一戦争となった場合、先頭に立って日本を(国民を)守らねばならない立場。
櫂とはどうしても立ち位置が異なります。
軍人の士気をくじくような櫂の発言は、たとえ個人的に理解できたとしてもあの場では看過できないでしょう。
軍人が必要以上に好戦的では困るけれど、いざとなったら身を挺して戦えるだけの士気は常に必要なこと。
元々軍人でもはない櫂にはイマイチ理解できないでしょうね。
とはいえ、勝てると見込んでいた米国との局地戦を櫂によってひっくり返された悔しさも相まって山本が話を打ち切った可能性も捨てきれません。
なんせ極秘裏に黒沼にハワイ奇襲作戦を練り込むよう指示を出していたわけですから。
はたして山本はどんな思いで櫂の話を中断させたのでしょうね。
黒沼も櫂と同じで合理的な人物です。
これから詳細に米国の資源や兵力を洗い出して研究するでしょうし、勝ち目がないことを知るでしょう。
しかし、何万人といる軍人たちは黒沼のようにはいきません。
その多くは旧態然とした組織の中、神風に代表する精神論でもって難局を打破できると考えているのではないでしょうか。
櫂にとっては全く理解しがたいことでしょうが、この部分こそが櫂自身、もっと理解に努めるべき部分なのかも。
江戸時代から続く武士道精神に美的感覚を見出している日本人の概念はそうそう覆るものでもありません。
櫂に立ちはだかるのは山本でも平山の大和でもなく、歴史なのかもしれませんね。
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