2020年10月17日発売の週刊ヤングマガジン2020年47号で、『アルキメデスの大戦』第238話が掲載されました。
『アルキメデスの大戦』第238話は、櫂の知らぬところで蠢く山本たちの企みの一端が見えはじめます。
伝票廃棄を咎めた櫂は武岡たちから猛反発を喰らう。
櫂は数字の正しさ重要さを説くが武岡たちに言葉は届かない…
主計科の面々は櫂に頼まれた仕事を放棄し退室。
その頃、長官室では山本と黒沼が対米戦について話し合っていた……
本記事では、『アルキメデスの大戦』第238話[高速計算機]のあらすじと感想を紹介していきます
※ここから先はネタバレ注意です。
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アルキメデスの大戦238話のあらすじネタバレ
【戦艦「長門」主計室】
これまでも伝票が廃棄されてきたことを知り驚愕する櫂。
伝票が無くては出納長の数字が正しいかどうか証明できないではないかと指摘。
計算が合ってない箇所だらけの帳簿ばかりなのを引き合いに出し、あまりにずさん過ぎると主計科の仕事ぶりまでも批判しました。
武岡は櫂の指摘に対し、お言葉を返すようですがと言葉を選びながら反論します。
伝票が無いのは艦内に保管する場所がないため。
記帳が終わり次第 重要なものを除いて処分するのが海軍の長年の慣例。
自分たちはそれに従っているまでだと説明。
そして計算が合わないのは人員不足によるものであり、円滑に業務を進めるために多少の誤差は許容範囲として認めるのも長年の慣例であると。
武岡の反論は、慣例に沿ってしていることなのだから、自分たちは何も悪いことはしていないといった内容でした。
櫂は武岡の反論に対し、数字は真実であり、全ての指標だと断言。
誤差を認め続ければ いずれ規律は乱れて組織は緩み、数字に厳格に謙虚に向き合わなければ軍は弱体化し、国を守ることなど出来はしないと訴えました。
だから処理作業の抜本的見直しに協力して欲しいと頭を下げる櫂。
武岡は主計科の面々の顔をチラッと確認。
皆でお昼に食堂で決めたことを実行に移すことを無言で伝えます。
主計科の面々も無言で小さく頷き”どうぞ”と合図。
確認の取れた武岡。
見直し作業をお願いした櫂に対し、やるならお一人でどうぞと言い放ち、帰り支度。
すると示し合わせたかのように他の主計科の面々まで一緒に帰り支度。
失礼しますとだけ言い残し、武岡たちは主計室を後にするのでした。
【戦艦「長門」司令長官室】
山本は黒沼が櫂と接触したと聞き、詳しく話を聞くべく黒沼を長官室に呼びつけていました。
黒沼に櫂の印象を訊ねる山本。
黒沼は櫂はまるで人間自動計算器との印象を持ったことを伝えました。
山本はその例えを聞いて納得の顔。
優秀なのだが論理一辺倒だからなと、櫂への不満も込め、人間自動計算器の意味を解釈。
残念そうな顔を見せる山本に、櫂に対しての失望の念を黒沼は感じ取ります。
そこで黒沼は山本にアドバイス。
櫂を人間とは思わず、機械と思えばいいと…
それも恐ろしく優秀な高速計算機と。
山本はそのアドバイスを聞いてまたもや納得の顔。
山本が黒沼から聞きたかったのは櫂の印象よりも、「暁作戦」についての櫂の反応でした。
黒沼に作戦を知った櫂の様子はどうだったかを訊ねます。
作戦を知った櫂は日米は絶対に戦うべきではなく、作戦は机上の空論で終わらせるべきだと黒沼に断言していました。
想像通りの反応を櫂が見せたことを知った山本。
櫂の言い分はもっともだとしながらも、正しいことばかりがまかり通るわけではないことを櫂も理解すべきだ嘆きます。
山本自身も米国と戦うことには反対でした。
しかし司令官である以上、ただ非戦論を訴えているだけでは無責任と考えていたのです。
万が一に備えて戦える態勢は整えておかねばならないと…
黒沼はそれでは尚のコト、暁作戦を完璧に完成させなければいけませんねと、ひと言。
山本は暁作戦は完成されているものとばかり思っていたため、黒沼の言葉に驚きます。
黒沼は暁作戦の完成には魚雷の改良が必須だが、それがまだ上手くいっていないことを山本に伝えました。
それを聞き、魚雷の改良には複雑な計算が必要であることが想像に難くなかった山本。
不敵な笑みを浮かべつつ、黒沼に解決策を教えます。
手元に優秀な高速計算機があるのだから使えばいいと…。
言葉の意味を理解し、山本同様に笑みを浮かべる黒沼。
【戦艦「長門」甲板】
山本は黒沼との話を終えた後、甲板に出て風にあたっていました。
甲板の上から湾内に停泊中の連合艦隊を眺め、ハワイ真珠湾にダブらせます。
そして開戦という万が一に備え、作戦上 絶対に戦艦「大和」はなくてはならないと強く思うのでした。
【呉・海軍造船所】
暗闇の中、建造中の巨大戦艦を見上げる平山。
戦艦の名は「大和」。
それは嶋田中将が秘密裏に平山に命じて造らせていた”もうひとつの大和”……。

アルキメデスの大戦238話の感想と考察
山本の狙いがうっすらと見えてきましたね。
山本は櫂によって局地的には米国に勝てる見込みがあることを知ってからというもの、「戦った後の講和」に気持ちが傾倒していきました。
それまでは日米開戦に断固として反対であったのに…
今は和平が一番大事なのは大前提としつつも、
なら勝ってからの和平の方が日本にとって有益なんじゃない?
或いは、勝ってからの和平でもいいんじゃない?
といった意識が無意識の内に軍人山本を支配していったのかもしれませんね。
万が一開戦になったら…なんてのは建て前に過ぎなくなっていることに山本自身が気づいていないのです。
軍、或いは軍人は戦うことが仕事。
仕事である以上は結果が求められます。
軍が求められる結果とは平和であり、勝利。
問題は軍、または軍人は実際に人と人とが殺し合いという仕事をして勝利と平和を求める組織、性であるということ。
ここが山本と櫂の違いですね。
山本も米国との和平を望んでいることに間違いはないのですが、軍人としての性といかエゴが目を曇らせてしまっています。
その曇った目での仕事が、平山の「大和」建造。
これは米国に売り渡すための「大和」に間違いありません。
平山「大和」納品では日米和平協定はご破算です。
それが山本の狙いなのでしょうね…。
櫂が黙ってそれを見過ごすはずはありませんが、平山もまた納得しないでしょう。
櫂の「大和」の当て馬になるために設計した訳ではありませんからね。
それにしても……
この分だと櫂は櫂のまま、何も変わることなく最終回まで人の感情に寄り添うことなど微塵もない男のままいきそう…
清々しいというか、悲しいというか、切ないというか…ちょっと複雑な気持ちです。
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