2020年10月5日発売の週刊ヤングマガジン2020年45号で、『アルキメデスの大戦』第236話が掲載されました。
『アルキメデスの大戦』第236話は、戦艦「長門」にて櫂と新たな仲間との出会いが描かれます。
早朝、戦艦「長門」の大食堂では主計科で働く面々がテーブルを囲み、今日から赴任する櫂の話題に花を咲かせていた。
海軍内で語られている櫂の噂話の数々に興味が募るばかり。
やがて会計室で櫂と体面をはたした4人は櫂の性格に触れ……
本記事では、『アルキメデスの大戦』第236話[新天地]のあらすじと感想を紹介していきます
※ここから先はネタバレ注意です。
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アルキメデスの大戦236話のあらすじネタバレ
1939年(昭和14年)12月
山口県岩国市 柱島
そこに大日本帝国海軍の連合艦隊が停泊していました。
連合艦隊とは、第一艦隊と第二艦隊で編成された海軍実働部隊の中核をなすものです。
第一艦隊の総艦艇数は34隻。
第二艦隊の総艦艇数は37隻。
他に連合艦隊司令長官直轄の木更津航空隊、鹿屋航空隊。
駆逐艦2・特務艦3。
以上が連合艦隊の編成。
総勢約2万6千もの将兵が艦上で訓練に明け暮れる日々を送っていました。
【戦艦「長門」大食堂】
12月7日
早朝の大食堂。
ひとつのテーブルを除いてまだ将兵たちの姿はありません。
ガランとした大食堂の中、一際目立つそのテーブルを囲んでいたのは主計科の将兵たちでした。
新しい主計長が今日から赴任するとあって不安もあり、業務に就く前に皆でどんな人間が来るのか4人で話し合っていたのです。
テーブルを囲んでいたのは、
先任の海軍大尉・武岡寿史
海軍中尉・徳田広務
海軍中尉・田所豊
海軍少尉・中野和哉
の4名。
皆でそれぞれ自分が知り得る限りの櫂にまつわる情報を出し合っていました。
それは海軍内に伝わる櫂の数々の功績や山本長官の強力な後押しによる異常な出世と現在の階級、はては不死身伝説に至るまで。
何もかもスケール外の内容に皆 にわかには信じられないといった面持ち。
武岡以外の3人は櫂を見たことが無く、どんな感じの風貌なのかも興味津々。
そこで武岡は櫂の印象を教えてやります。
見た感じまだ学生のような若造だったと。
武岡は以前に海軍省で櫂を見かけたことがあったのです。
やがて他の将兵たちが続々と大食堂に現れ始めます。
将兵の基本は早寝早飯。
他の将兵たちに席を空けるため、4人は食事に集中。
朝食を済ませ、大食堂を後にします。
【戦艦「長門」会計室】
仕事場である会計室に向かう道すがら、尚も櫂の噂話をしていた4人。
田所と中野は櫂の噂に聞く功績の凄さや飛び級ともいえる階級に何か密命でも帯びて「長門」に来たのではないかと勘繰ったり若干興奮気味。
武岡と徳田は自分よりも年下が上司となることにやりづらさを感じて気構えており、若干憂鬱な気分。
それぞれに櫂を頭に想像しながら会計室へ。
まだ始業には全然早い時間ということもあって、会計室には誰もいるはずはないとノックをせずに入室。
が、しかし。
4人の目に飛び込んできたのは”噂の”櫂その人でした。
予想だにしていなかった状況に固まる4人。
慌てて上官である櫂に対し、失礼しましたと敬礼。
櫂は特段怒るでもなく、はじめましてと一礼し、自己紹介。
武岡らも櫂に続いてそれぞれが自己紹介。
一通り自己紹介が済むと雑談など一切せず、すぐに櫂は引継ぎをしたいのでと先任の武岡に本年度の出納長を見たいと依頼。
櫂のその態度に武岡は嫌味な奴だと内心で思っていました。
部下より早く仕事場に入って、初対面にもかかわらず雑談も無くすぐに仕事かよと…。
連合艦隊主計部とは、艦隊に関わる経費の収支全般を担っている部署。
将兵約2万6千人の給与支払いはもちろんのこと、食料物資から砲弾、煙草一箱に至るまであらゆる収支を管理。
また戦闘記録をはじめとする各種業務記録も担当していました。
つまり主計科とは、金という血液を送って肉体である部隊を動かす心臓と、物事を記録する脳の役割をもつ組織。
軍隊は「給料」「食料」「弾薬」が揃ってこそ、その機能を果たすのです。
5年前、まだ学生だった櫂は山本の特命によって主計科の少佐として海軍に入隊。
しかし主計科の人間として海軍に入ったものの、主計科本来の仕事に櫂が携わることはこれまで全くのゼロ。
海軍に入ってこれがはじめての本来の主計仕事でした。
たくさんの帳簿と数字に囲まれ、これまでの異常なまでの激務に比べ、なんと平和で穏やかな時間だろうかと、この状況を満喫。
出納長に目を通していると、櫂の次の上陸日を教えて欲しいと中野が尋ねてきました。
聞けば上陸日を取引のある業者に知らせなくてはならないためだと。
食料品や物品購入で取引のある地元業者たちが新主計長を歓迎する寄席を儲けるのがこれまでの慣例だったのです。
宴の費用が海軍との折半ではなく、業者持ちだと聞いてこの慣例とは所謂接待であると知ります。
櫂は中野に宴を断るよう指示。
思いもよらぬ櫂の指示に固まる中野。
側で会話を聞いていた3人も櫂の指示に驚きが隠せません。
一瞬 静まり返り、凍りつく会計室。
空気を読むということが出来ない櫂はさらに会計室を凍らせます。
飲食を伴って接待を受ければ便宜を図るきっかけを業者に与えることになり、癒着の温床になりかねないことを指摘。
任期中は業務以外では業者と一切接触しないことを4人に伝え、中野には業者にもそう伝えるように念を押す櫂なのでした……

アルキメデスの大戦236話の感想と考察
今回も新章の舞台と登場人物紹介といった内容でした。
この進行速度からして次回も人物紹介となりそうな気配。
なかなか新章がどんな話になるのかが見えてきませんね。
ただ、新章が櫂の性格(内面)に関する内容となることはおそらく間違いないとは思います。
自身の気配りの出来なさや、空気の読めなさを自覚する章になるのではないかと。
もちろん正しいことを貫くという櫂の信念自体は決して揺らぐことはないでしょう。
ですが正しいことを貫いた結果、他人を傷つけてしまっていることもあるということに櫂はあまりに無頓着。
結果、いらぬ敵を作ってしまいかねないのです。
櫂の弱点ともいえることですし、日米開戦待ったなしの状況なわけですから、ここらで櫂には弱点を自覚してもらいましょう。
ストロングポイントはウイークポイントにもなりやすいということを。
櫂は業者との接触を断っていましたが、否応なく接触することになるでしょう。
慣例という名の悪しき習慣を深く知っていくことになると思われます。
業者に毅然とNOという態度を取る櫂が目に浮かびますね。
けれど、便宜を図るということは取引のやり方のひとつでもあります。
より利益を得るために双方が損をしないように裏取引することなんて現実によくあること。
商売に限らず人間関係を円滑に構築する基本は「魚心あれば水心」です。
業者あっての軍、他者あっての自分という自覚が足りなそうな櫂には理解できないことかもしれませんね…。
システムこそが最上、それさえあればというゴリゴリの合理主義者ですから。
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