2020年1月20日発売の週刊ヤングマガジン2020年8号で、『アルキメデスの大戦』第201話が掲載されました。
『アルキメデスの大戦』第201話は、櫂が語る欧州戦線の未来予想図にルーズベルトが興味津々です。
ナチス・ドイツがフランス・パリまで必ず進攻すると断言する櫂にルーズベルトは半信半疑。
櫂は自信たっぷりにそれは現実に起こると言い切ります。
第一次世界大戦時に起きたフランス対ドイツの攻防を引き合いに出し、ドイツは必ず奇襲作戦に出るであろうと説明。
まるで日本軍がハワイの米軍基地を奇襲することを暗示させているかのような櫂…
そしてパリを陥落させたヒトラーは妄想を拡大させ、その暴走は最終的に米国に向けられることになると断言。
そんな危険を孕んだ状態の中、米国が日本とドイツの両国を相手に同時に戦争をするなど愚策であると櫂は言いたいのです。
戦艦「大和」購入を含む日本側の条件を呑めば、日本との戦争は回避できることをもう一度考慮するべきであると…
本記事では、『アルキメデスの大戦』第201話[フランスの盲点]のあらすじと感想を紹介していきます。
※ここから先はネタバレ注意です。
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アルキメデスの大戦201話のあらすじネタバレ
ルーズベルトはナチス・ドイツによるフランス進攻、パリ陥落と断言する予想の根拠、確証を櫂に求めます。
これに対し、第一次世界大戦時のフランス、ドイツ両国の攻防を引き合いに出して櫂は説明するのでした。
第一次大戦時、フランスはドイツとの国境沿いに「マジノ線」と呼ばれる塹壕線を進化させた要塞群を敷きました。
要塞群はフランス・ドイツ国境700キロに構築され、その防衛能力は世界最強と謳われたほど。
塹壕は火砲の脅威を大きく減退させることに成功しましたが、その塹壕を巡る争奪戦は凄惨を極めました。
いかにして塹壕を突破するかが焦点となり、毒ガス・戦車・航空機などの新兵器が続々投入され戦火は拡大。
その結果、短期決戦との目論見は外れ、4年以上にも及ぶ長期戦となり、フランス170万人・ドイツ248万人もの戦死者を出すことになってしまったのです。
このマジノ線にも弱点はあると櫂は言い、それは隣接するベルギーとの国境だと説明。
フランスは予算の都合もあって中立国ベルギーとの国境沿いにはマジノ線を敷きませんでした。
しかし、ベルギーはドイツとも隣接する国。
ドイツはベルギーを通り抜け、マジノ線がガラ空きの北側からフランスに回り込むことが出来るという訳です。
これは実際に第一次大戦時に当時ドイツ軍参謀総長であったシュリーフェンが考案したプランでしたが、この時は上手くいきませんでした。
櫂はドイツはこの失敗から学び、プランに修正を施して必ず再度ベルギー側からフランス侵攻を試みるはずだと語ります。
内燃機関をを搭載した機甲車両による機動力を用いて迅速に侵攻する。
その場合、ベルギー北部の平原地帯ではなく、南部アルデンヌの深い森を進撃するであろうと。
ルーズベルトは森林地帯の行軍はありえないといいますが、その常識をドイツは逆手に取るに違いないと櫂は断言。
戦いにおいて最も効果的な攻撃は奇襲であると言い切ります。
櫂はかつて山本五十六海軍大将と対米戦を想定した話をした時に、米国軍のハワイ基地を奇襲する案を提示。
その時も、それが最も効果的だと話していました。
ドイツ軍もあえて困難とされるアルデンヌの森を突き、装甲車両で編成した機械化部隊で迂回突破を図って奇襲攻撃をすることが最も効果的であることを承知しているはず。
なぜなら、自分はかつて中国軍の上海補給基地を空爆によって奇襲し、中国軍を撤退させているといい、困難な奇襲攻撃を日本が出来てドイツが出来ない訳がないと櫂は説明するのでした。
さらに、櫂にしては珍しく憶測に基づいた意見まで。
おそらく、今のヒトラーは夢と現実の区別がついておらず、完全に仮想空間に身を置いている。
妄想の世界で自分をナポレオンになぞらえ、ヨーロッパの皇帝としてパリ入城を果たすに違いないと熱く語る櫂。
その先にあるのは世界征服、つまり最終的なターゲットが米国になるのは必然。
であるならば、米国は今日本と争う時ではなく、ナチス・ドイツからヨーロッパを救う時!
そしてそれができるのは貴方しかいないと、身を乗り出してルーズベルトに直訴するのでした。
ルーズベルトは考えます。
日本と和平を結び、欧州戦線へ全力を注ぐことが米国にとって最も合理的ではある…
しかし、このまま交渉を成立させては私の面子が…
世界一である米国の体裁が…
ルーズベルトが櫂にいいます。
仮に米との和平に合意したとして、日本に追加の見返りを求めたら何があるかと。

アルキメデスの大戦201話の感想と考察
ルーズベルトにドイツの奇襲攻撃の話を持ち出したことは、日本が米国相手に戦うとなったら自分達もそうしますと暗に言っているようなもの。
この話を覚えていたルーズベルトが後に日本にあえて奇襲攻撃をさせ、米国参戦への大義名分を作るようなことになるのだとしたら…
櫂の発言は責任問題になっちゃいますね。
ドイツの奇襲作戦は別名「電撃戦」といい、特に対フランスにおける戦いはその代表といえるものです。
作中でも語られているように、機動力を駆使してより効率的に敵陣内へと侵攻する。
これには各部隊の連携とスビードが求められます。
ドイツは軍の情報伝達・部隊の指揮能力を高めた機械化部隊を編成し、前線に穴を開けることに成功した訳です。
まるで歴史を見てきたように、櫂はドイツが後に行うであろう「電撃線」を詳細に語っていました。
リアリティの男にそこまで詳細に語られては、ルーズベルトじゃなくてもその言葉を信じちゃうでしょう。
あくまで和平のためとはいえ、双方の利益に繋がる交渉な訳で、いってみればお互いに儲け話でもあるのです。
そこに悲劇的な犠牲者を出しているナチスの話まで持ち出して交渉(儲け話)をまとめようとする櫂の神経の図太さが恐ろしくもあり、頼もしくも感じました。
そんな櫂の姿は、欧州戦線がどこか”対岸の火事”であった当時の日本と重なって見えましたね…。
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